検査が済むと、今度は隔離生活中にしなければならないことを説明され、それから次なるポイントで検査結果の確認に使われるコード番号を渡される。隔離対象の入国者の運命が決まるのはこの時だ。宿泊施設に関して、何か希望があればここで伝える事になっている。ここを過ぎてしまうと、その後どんな施設に送られても一切文句は言えない。1週間の完全宿泊隔離生活が待っている我々にとって、「いったいどんな所で過ごすのか?」ということは切実な問題である。
 

     愛煙家の私は、「喫煙できるお部屋はありますか?」と涙目で尋ねた。係のお姉さん(日本人だった)は、「数が少ないので空いているかどうかはお約束できませんが」と言いつつも、一応希望を聞いてくれた。その時、「テレビがなくても宜しければあまり待たずにご案内できますが、いかがですか?」と聞かれた。普段、テレビを見ない生活をしている私にとって、テレビはそれほど重要なアイテムではない。自然と「なくてもいいです」と言いかけて、ハッと思い止まった。その一瞬、私の頭をよぎったのは、ローマでリサーチしている時にSNSで知った「テレビもWiFiもないどこぞの田舎の大学寮に入れられた」という人の話。今時東京近辺のホテルにテレビがないなんてあり得るだろうか? テレビがないということはつまり、ホテルではないということなのか? そんな疑問が0.5秒の間に光速で頭の中を駆け巡り、次の瞬間「いやぁ、やっぱりテレビは欲しいですよね」という言葉が口をついて出ていた。 

 

    検査結果が出るまで1時間弱の時間を要したが、朝7時という時間帯に到着した我々はまだラッキーだったと思う。事前に覗き見た厚労省のサイトには、18日からの帰国ラッシュにより、空港を出るまでかなりの時間がかかることが予想される、と書かれていたからだ。実際、SNSで拡散されている帰国者の体験談の中には、空港を出るまで10時間、12時間かかった、という人もいた。それに比べれば我々のグループはすんなり進んでいる。
 私の番号が呼ばれ、無事に「陰性」の検査結果を受け取ると、グループごとに分けられたブースの椅子に座って待つよう指示された。ここからは1グループに2〜3人の係員が付き添い、一列になって入国審査へ向かう。審査を通ってスーツケースを受け取り、税関を通過してようやくゲートの外に出られた。グループは10名程度、全員が出てくるのを待ってから再び一列になってバスが待つ駐車場へと向かう。

 

それぞれの宿泊施設へ向かうバスが並んだ羽田空港の駐車場。行き先はどこにも記されておらず、尋ねても誰も教えてくれない。文字通りの「ミステリーツアー」の始まり。