2022年は寅年だ。風の吹くまま気の向くまま、旅を続ける「フーテンの寅」こと車寅次郎を思い浮かべる。言わずと知れた映画『男はつらいよ』の主人公である。自分の大好きな映画だ。「TABILISTA」というサイト名は「旅の達人」という意味を込めて作ったのだが、寅さんはまさに「タビリスタ」だ。正月だけに「思ひ起こせば恥ずかしきことの数々、今はただ後悔と反省の日々を・・・」というお決まりの年賀状も懐かしい。寅年を迎えた初記事は、旅人の大先輩である寅さんについて少し書きたいと思う。

 

寅さんと言うと歴代マドンナのことが語られがちだが、寅次郎が旅した先々で歩いた街の情景なくしては語れない。この映画が日本中で愛されている要因のひとつでもあるだろう。必ずしも有名な観光地だけを巡っているのではなく、ごくありふれた街の日常生活を切り取ったような描写が親近感を抱かせるのかもしれない。自分は寅次郎の甥である満男とほぼ同世代なので、映画に出てくる風景は育ってきた時代とモロに被る。そして寅さん所縁の地もまた数多く訪れていた。

 

いまでこそロケ地巡りは旅のトレンドともなっているが、『男はつらいよ』のロケ地は北海道から沖縄まで日本全国に点在していてコンプリートするのはなかなか大変だ。もちろんすべてに行ったわけではないが、旅に行った先々で『男はつらいよ』のロケ地という場所に遭遇した。いかに国民的な映画であったかが分かる。

 

特に思い出深い場所を3つ挙げるとすれば、京都の伊根、伊豆諸島の式根島、奄美の加計呂麻島あたりだろうか。

京都の丹後地方にある伊根は、第29作「寅次郎 あじさいの恋」のマドンナ、かがり(いしだあゆみ)の実家。映画では錆びれた漁師町の寂しい雰囲気たっぷりだったが、今はすっかり観光地となっていて、舟屋を改装したカフェまである。子どもがまだ0歳の時に訪ねたので、大変苦労した思い出が蘇る。想像していたより海がキレイで透き通っていたことにも驚いた。

伊豆七島の式根島は第36作「柴又より愛をこめて」でタコ社長の娘あけみ(美保純)とともに訪れ、真知子先生(栗原小巻)に恋したところ。映画と同様に下田から船で渡ったが、ひどい船酔いで苦しんだことが忘れられない思い出となっている。冬に行ったので観光客はほぼいなくて、本当に静かな島時間を過ごした。波が高くて地鉈温泉に入れなかったことだけが心残りだ。

加計呂麻島は渥美清の遺作となった第48作「寅次郎 紅の花」でリリー(浅丘ルリ子)と暮らしていた島だ。満男と同じく奄美大島の瀬戸内町の古仁屋港から海上タクシーで渡った。キレイな熱帯魚を港からも簡単にみることが出来る。その時に旬だった名産のたんかんが島中で見られ、奄美の碧い海と深い緑に癒されたのを覚えている。

 

昨年は「昭和レトロ」が大流行した。昭和生まれには懐かしく、若い世代にはオシャレに感じられるようで、今年もその流れは続きそうだ。2021年タビリスタ最後の記事は蛇光院氏のの天気予報の話だった。「けっこう毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りは糞だらけ」という寅さんのセリフにも繋がる。「風の吹くまま気の向くまま」そんな旅が出来る日が戻ってくるだろう。機会があれば全国にある『男はつらいよ』の他のロケ地のことも書いてみたいと思う。2022年が皆様にとって素晴らしい年となりますように!

 

TABILISTA編集長 更科登