写真・仲程長治 文・シマネコキネマ

 

漁港の護岸の向こう側から、人間たちの様子を伺っているさくら耳

 2018年公開の映画『Nyaha!(ニャハ!)』の撮影で、沖縄本島中部で5日間に渡って開催された「一斉TNR」の様子を追いかけた。うるま市にある5つの島を中心としたエリアから、300頭以上の飼い主のいないたちを捕獲(Trap)し、不妊・去勢手術(Neuter)やワクチン接種、ノミ・ダニ・回虫の駆除などをした後、元いた場所に戻す(Return)この活動は、すべて寄付金とボランティアの労働によって成り立っている。

 

島の浜辺で出会った子猫。修学旅行生たちにお弁当のおこぼれをねだっていた

 実は、沖縄でこうした活動が行われていることを知ったのは、映画の制作をスタートしてからのことだった。それまで、外猫たちの耳先が切れているのは喧嘩のせいとばかり思っていたのだ。

 ある日、いつも公園で猫と遊んでいる小学生から「耳の先が切れている猫はさくらねこ。赤ちゃんが生まれないように手術しているんだよ」と教えてもらい、自分たちの猫に対する認識、視野が狭いことに気づかされた。



うるま市内の公園には、たくさんのさくらねこがのんびりと暮らしている

 注意して見てみると、沖縄の島々には、たくさんのさくらねこがいることがわかってきた。そしてその後ろには、飼い主のいない猫たちが人間に嫌われないように、愛される猫になるようにと、決して楽ではないTNR活動を無言で支える、たくさんの人間たちがいることも知った。

 さくらねこになるということは、子孫を残せず、一代限りの命になるということだ。それが猫の野生、自然の摂理に逆らうことはわかっている。それでも、増えすぎてしまった猫と人とが共生していくためには、今できる最善の方法を模索しながら、選択していくしかない。

 



さくらねことなって、住み慣れた場所に帰ってきた猫たち。その表情は穏やかだ

 TNRされる当の猫たちは…といえば、手術の後もいつも通りで、実にひょうひょうとしていて逞しい。カゴを持って捕獲に行くと、すでにさくらねこになっている猫たちは逃げるどころか集まってきて、まだ手術をしていない仲間に向かって、「え? お前まださくらじゃないの? オレ、さくらだよ」と言っているようにも見えた。

 いつの日か、猫たちが野生のままに恋をして、自由に子を生み、安心して子育てできる時代がくるかどうか…は、良き隣人であるはずの、私たち人間にかかっている。

 

人間の思惑などお構いなし、今日も野生のままに恋する猫たちもたくさんいる