写真・仲程長治 文・シマネコキネマ  

フクギ並木の入り口で、観光客を待ちわびていたキジトラ

 備瀬のフクギ並木といえば、沖縄本島北部を代表する観光スポットのひとつ。木漏れ陽が差し込む白砂の道が美しく、近年では、緑のトンネル内で観光客の自転車が渋滞するほど人気を集めているのだが、撮影に訪れた日は春の雨がしとしとと降りそぼる朝。さらに、新型コロナウィルスの感染拡大を受けてすぐ近くにある「沖縄美ら海水族館」が臨時休園していたこともあって、観光客はもちろん人影そのものがまばらだった。しかし、集落の住民や島猫たちにしてみれば、久しぶりに本来の備瀬の姿に戻ったと言えるのかも知れない。

 

暇だからご案内しますよ、という感じでカメラマンの後をついてきた 写真©シマネコキネマ
民家のガレージで寝ていた老猫。起こしちゃってゴメンニャサイ
木々に落ちる雨音だけが響く。こんなに静かな備瀬は久しぶりだニャ〜

 駐車場に車を停め、順路に沿ってフクギ並木を歩いていくと、さっそく1匹のキジトラが「待ってました〜」とばかりにかけ寄ってきた。ソーシャルディスタンスではないが、ある程度の距離がないと「島猫百景」としての写真は撮れないのでそろそろと離れようとするのだが、すぐに「なでて〜」「かまって〜」とすり寄ってくる。
 数年前に備瀬で撮影をした時には、しかぶ〜(怖がりですぐ逃げてしまう)猫しかいかなったので、ここ数年の観光地化で備瀬の猫もずいぶん変わったんだなぁと思った。キジトラはその後もしばらく撮影隊の後を追いかけてきたが、テリトリーの境界線とおぼしき十字路で立ち止まり、見送ってくれた。

 

ゴミ置き場をあさっていたボスらしきオス
海岸でエサを探していた猫はこっそり覗いていた 写真©シマネコキネマ
過剰なエサくれ攻撃をしてきた茶トラくん

 観光客が少ないフクギ並木はどの筋道もひっそりと静まり返っていて、古き良き沖縄の集落らしい風情が溢れていた。
 東から西へ走る道には涼やかな風が通り抜けて、雨なのに蒸し暑さもなく心地よい。しかし、喜んでばかりはいられない。
 観光向けのお店が軒並み休業しているということもあって、猫にとっては「エサのもらい口が減る」という切実な問題があるのだ。ゴミのないゴミ置き場でエサを探す猫、波打ち際でおこぼれを探す猫、何かくださいと訴えてくる猫…。
 備瀬だけでなく、沖縄の観光地にはたくさんのノラ猫が暮らしている。後日、猫の保護活動をしている人から「訪れる人が激減した観光地では、猫のエサ事情にもじわじわと影響が出ている」と聞いた。コロナ禍の影響は人間だけでなく、島猫たちにも及んでいることを実感する日々が続いている。

 

肉球についた白砂をていねいにお手入れ
数少ない観光客をじっと見つめていた