クリスマス前の12月23日から1月6日の間は、イタリアの冬のヴァカンスシーズン。長い休暇が取りやすい期間、この機を狙って遠い国を旅してみようと目論む人も多い。今回の私の正月の一時帰国にも、二人のイタリア人が同伴した。一人は武道オタクの相棒、もう一人はおっちょこちょいで感激屋の親友(♀)。さらに同行はしなかったものの、年末になっていきなり日本行きのチケットを衝動買いした友人一家(子どもを含め総勢8名の二家族)まで同時期に日本へやってきた。初めての人もそうでない人もいるが、ともかくてんやわんやの騒ぎとなった彼らのニッポン滞在記をご紹介しよう。*本記事は2017年1月に「tabilista」で掲載したものです

 

いざ、京都へ!

 「日本でどこに行きたい?」と聞くと、ほぼ99%のイタリア人は「キョート!」と答える。日本には過去に何度か来ている相棒も親友も、京都へは何度でも訪れたいという。初めて訪日する友人一家はなおさらで、「28日に東京に着くから29か30には京都へ行こうと思うんだけどどうかしら?」とお気軽に尋ねてきた。とんでもない!日本の師走の大移動日ではないか!しかも8名で「シンカンセンはみんな一緒に座りたい」という。よくよく聞くと、12月23日の段階で東京も京都もまだ宿を取っていない、十日間の日程だけど金沢広島もいきたいわぁ〜、どこか安くていい旅館を知ってたら教えて……。

 まったく呑気にもほどがある。小さな子どもを4人も連れて、年末年始の大混乱のまっただ中へ飛び込もうとしていることを友人一家は全く知らなかったのだ。日本の年末年始の大移動と初詣の神社仏閣の状況をコンコンと説き、できる限りの情報を掻き集めて渡した後は、彼らの高度なサバイバル能力に委ねることにした。

 どうなることかと心配でいっぱいの頭を抱え、私は相棒と親友とともに一足先に京都へ向かった。時間節約のため「駅弁でお昼にしよう」と言うと、二人は大喜びで賛成した。柿の葉寿司と人気の駅弁が一度に楽しめる『よくばり弁当』を嬉しそうにほおばった後、京都まで爆睡。二人は既に「正しい新幹線の乗り方」をマスターしていた。

 

小さな箱にたくさんの味が詰まった駅弁はイタリア人にも大人気。蓋を開けるや否や「マンマミーア!」と歓声が響き渡った。

先斗町そぞろ歩き。石造りの重厚な建物を見慣れているローマ人の二人には、繊細な木造建築がことのほか美しく見えるようだ。

■町家旅館初体験

 今回の京都の宿は、『タビリスタ』でもおなじみの「楽遊」に予約していた。駅からタクシーで乗り付けると、古い友人でもある女将の山田静さんがにこやかに出迎えてくれた。京都へはかなり足を運んだと自負している私だが、町家旅館に泊まるのは初めてである。ウナギの寝床のような独特の細長い構造、開放感のある高い天井、さらに奥には畳とパソコンブースを備えたコミュニティスペースがあり、我々が到着した時もちゃんちゃんこ姿の外国人のおっさんが一人で新聞を広げてくつろいでいた。

 和風モダンなインテリアはもちろん、コンパクトに必要なものが全てそろっている快適な空間。イタリア人二人はこの宿に一目惚れした。「ケ・ベッラ!!(なんて素敵)」「ファンタースティコ!!」を連発し、チェックインの間に出された和菓子と緑茶を「マンマミーア」と嘆息しつついただいた。このお菓子とお茶で彼らの宿への採点は頂点に達した。

 



イタリア人二人が一目惚れした町家旅館。伝統的な和風建築と快適なモダン設備で、「まるで自分の家みたいにくつろげる」のがその理由。