■寅さんがふらっと入ってきそうな駅前食堂

 

韓国でも日本でも取材となると、その地の産物を生かした“ごちそう”を食べることが多い。だが、市井の人が日常的に食べているものを味わってこそ、その土地を知ることになるのだといつも思っている。渡波(わたのは)駅の真向かいあった『みうら』にも、まさにそんな気持ちで入った。大好きな日本映画『男はつらいよ』でも、寅さんがヒロインと出会うのはたいていこんな大衆食堂だ。

 

『みうら』に入ったとたん、カレーの匂いを感じた。カレーライス? いや、カレーうどんを食べている客が多いのだ。筆者はカレー好きで、日本に来るたびにチェーンの『ココ壱』で食べるのが楽しみである。早速注文。カレーは『ココ壱』のような洗練された味ではなく、少し甘味のある家庭的な味だった。魚市場取材で早起きし、あちこち歩き回って冷えた体があたたまる。この季節の人気メニューである理由がよくわかった。

 

同行者が頼んだ海老天そば。東北地方らしい濃い目の汁を吸った海老天の衣や天かすが美味しかった。

■石巻駅前散歩ふたたび

 

こんにちは~、こんにちは~

顔見知りかどうかなど関係なく、大人と子供の間であいさつが交わされるのを石巻のアイトピア通りで何度も見た。震災後の教訓として習慣化したのだろうか、それ以前からそうなのだろうか。こういうのを“美風”というのだ。筆者の20年来の友人、北山節子(接客アドバイザー)の「あいさつは相手に興味をもつきっかけ。あいさつが事故や犯罪を未然に防ぐ」とう言葉を思い出した。

 

営業しているのだろうか? 店の外に突き出した立飲み用と思われるバーの感じからすると、閉めてしまったのだろうか。外からはわからなかったが、ガラス窓の「復興バー」の文字が目に焼き付いた。

 

■酒蔵見学、印象的だったのは人(その①)

 

石巻の関係者の尽力で、宮城の名酒『日高見』の醸造元である平孝酒造を見学することができた。ここでもっとも印象的だったのは5代目社長の平井孝浩さん(56歳)、その人。美男だからではない。韓国でも酒蔵といえばかつては富豪の象徴で、酒蔵の息子と聞けば豊かさだけではなく洒脱さを感じたものだ。平井さんはそれを絵に描いたような人。何を聞いても答えは明瞭で“皐の鯉の吹き流し”のようにすがすがしい。少々辛口な物言いにも嫌味がなく、腹を割って話していることが伝わってくる。韓国からの旅行者が見学に来た場合の対応についても、前向きな話をしてくれた。日高見ブランドの味を現地で確かめるのはもちろん、ぜひ平井さんに会いに行ってもらいたい。

 

平孝酒造の日高見ブランドは、旧北上川に沿った仲町通りにある『いしのまき元気いちば』でも買うことができる。

 

■製麺所見学、印象的だったのは人(その②)

 

取材最終日の前夜、石巻市泉町にある『茶寮 景松庵』での会食で知り合い、その翌朝、自社の製麺工場で見学・試食をさせてくれた島金商店の島英人社長。石巻で会う人会う人、総じて奥ゆかしかったなかで、島さんは抜きん出て明朗快活だった。大きな声とさわやかな笑顔。スタッフの仕事ぶりを見ていられず、自らフライパンをふったり、料理を盛り付けてくれたり。

有限会社 島金商店 http://www.shimakin.jp/

 


韓国の麺食の醍醐味がチャジャンミョン(ジャージャー麺)の麺とタレを豪快に混ぜる場面だとしたら、日本のそれは焼きそばをフライパンで炒めるときかもしれない。島金商店の試食室で。

 

石巻発祥の茶色い焼きそば。最後に目玉焼きをのせてアクセントに。韓国人にも受けそうなビジュアルだ。