どれだけ重ね着をしても服の隙間から冷気が忍び込んでくる夜、大きな鍋を4~5人で囲む。赤い汁がポグルポグル(ぐつぐつ)煮立つのを待つのももどかしい。具が浮きつ沈みつしている汁から漂う湯気だけでソジュが飲めそう……。

 と、こんなふうに正攻法で鍋のことを書くほど私は初心(うぶ)ではない。今回は我が国でも注目されることはまずなく、日本では知らない人も多そうなものを取り上げる。その名もスルクッ(술국)。

 술(スル)は酒。국(クッ)は汁物のこと。とはいえ酒入りのスープではない。酒に添えられる汁物のことだ。韓国では飲食店で酒を頼むと、ちょっとしたつまみが添えられることがある。物価の高いソウルでもキムチ一皿、ピーナッツ一皿くらいは期待できる。気前のよさが信条の全羅道ならキムチやナムルなどの小鉢が3~4皿付くことも珍しくない。そんなときたまに見かけるのがスルクッである。スルクッは汁物だが、店によってはトゥッペギと呼ばれる土鍋に入って出てくるので、鍋と呼んでもいいだろう。

 

■スルクッの具

土鍋に入った豆モヤシのスルクッ(写真右)

 スルクッには具がこうだとかスープがこうだとかいう決まりはない。特別な看板メニューのない飲み屋なら、豆モヤシのスープが出てくる可能性が高い。シンプルだが、延々とすすり続けても飽きない味だ。豆モヤシにはアルコールを分解するアスパラギン酸が多く含まれているので、二日酔い防止効果も期待できる。

 

スンデ(腸詰)の店では豚肉や内臓を煮込んだスルクッ(左上)が出てきた