文・写真/室橋裕和

 

 冷たい風が吹く花咲漁港はなんだか寂しい空気に包まれていた。港に沿って倉庫が並び、そのまわりにわずかばかりの集落。人が住んでいる様子の家もあるけれど、崩壊した建物、無人のまま草木に呑まれている建物もいくつもあった。人の姿はない。ときおり、海産物でも積んでいるのかトラックが走り去っていく。

 その漁港の入り口には、大きな看板が立てられていた。

 「友好の確かな証 四島返還 北方領土は日本固有の領土です」

 ロシア語と英語も併記されている。この港にはロシアの漁船も寄港するという。船員たちは荷揚げが終わったあとの束の間の休暇、ここから根室の町に遊びに行くそうだが、その前に我が国の主張をしっかり見せつけておこうということなのだろうか。

 いちおう「ようこそ ねむろへ」と書かれてはいるが、あまりウェルカムな感じのしないそのモニュメントの周辺に、問題の「ロシア村」は広がっていた。ロシア語の看板を掲げた建物がいくつも並んでいるのだ。

花咲港の入り口には北方領土の領有を訴える看板が

港のまわりにはこんな看板のある建物がいくつか並んでいる

ナゾのロシア語が書かれているが、こうした建物にも誰もいなかった