■踊る大鍋紐育(ニューヨーク)

 

道路に白い煙の上がる、冬のニューヨーク。
冷え冷えして縮こまってしまう日本の寒さとは違って、乾燥した刺すような空気が、自由に・活動的に動き回らせてくれる街。

 

そんな街に住む友人から、
「知り合いのアメリカ人が生活習慣病で続けて亡くなってしまったので、生活習慣病を予防できる料理を教えてあげたい。でも野菜料理といえばサラダばかりなので、簡単に作れるものはないだろうか?」
と問合せを受けたのは、数年前のことだった。
「そうねぇ、鍋にすればいいんじゃない」
「じゃあ、教えに来て!」

 

市場調査をするのが仕事の友人は、早速スポンサーを集めて、日本の鍋というものがアメリカ人にどう受け入れられるのか、どのような味が好まれるのか、具材は、ネーミングは・・・などの調査を兼ねた「鍋を広めるパーティ」を企画した。

 

すき焼き、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋、ほうとう、カレー鍋。
集まったニューヨーカーたちの前で次々と鍋を作ってみせると、
「(作り方が)とてもシンプル」
「野菜がたっぷりでヘルシー!」
と歓声が上がる。切るだけ、鍋に入れるだけ、お客様の前でのプレゼンテーションにもなる鍋料理は、パーティのホストがやるのにぴったり!特に山梨県の名物「ほうとう」は、「スィートなかぼちゃが、ヌードルになるなんて!」と、目を丸くしながら、器用にうどんをお箸で掴んで食べていた。

 

鍋料理は、年齢も性別も、人種も宗教も問わず、その地域にある肉や魚、野菜、ダシで作れる。調理は簡単な上に、栄養のバランスがとても良いので、健康的な食事になる。
そして何より、美味しい!
ひとりでも、大勢でも、グツグツと煮える様子を眺めながら食べるのは、古の料理の原点を思い出させるからか、わくわくと胸踊るものがある。

 

「ナベ、イチバ〜〜ン!!」
知っている日本語はそれしかないのだろうけれど、精一杯、美味しかったと伝えてくれる様々な人種の人たちに感謝しつつ、これからもそんな鍋料理を広めて行こうと心に誓ったのだった。
私と鍋を広める活動の原点。それが、ニューヨーク。

 

集まったニューヨーカーと鍋を囲んで乾杯。入れ替わり立ち替わり、様々な人たちが鍋を食べに来てくれた。

その日作った、「ほうとう」。野菜は全部、地元のスーパーマーケットで買ったもの。

翌年、同じくニューヨークで、鍋の普及イベントを行う。「日本の鍋」というのがどうやったら伝わるかと思い、侍をイメージさせる奉行エプロンを考案。

ロシア旅行の際に見つけた、アゼルバイジャンの鍋料理。砂漠の民が食べるものだとか。世界中で、鍋は食べられている。

煙るニューヨークの街と自由の女神。