文/チョン・ウンスク

 

■江原道・束草の名物、ヤンミリ

 70~80年代の韓国では練炭ストーブがよく使われていた。エアコンが普及した現在はあまり見なくなったが、田舎の市場や食堂に行くと、錆びついたロボットのような姿を見かけることがある。

 私の地元、千戸洞の裏通りにある行きつけの大衆酒場では練炭ストーブは現役で活躍中だ。暖房としてだけではなく、焼き場としても使われている。

地元の行きつけの酒場『オンマソン・チヂミ』の練炭ストーブ 

※拙著『美味しい韓国  ほろ酔い紀行』p34掲載店

 この時期は女将がヤンミリ(シワイカナゴ)を焼いている。

 ヤンミリはサンマよりひとまわり小さい細長い魚で、冬場、束草(ソクチョ)など東海岸でとれる。束草ではヤンミリ祭りも行われている。

 半干ししたものを焼いて食べたり、カルチ(太刀魚)のように辛く煮て食べたりする大衆魚だ。日本で言えば、シシャモのような存在だろうか。頭から尻尾までまるごと食べることができ、酒のつまみとして人気がある。

 酒場の女将に焼きものを頼むと、練炭が丸見えのストーブの上に2枚の焼き網で挟んだヤンミリを10尾のせて、粗塩をふって焼いてくれる。昔、家庭や食堂でよく見た風景だ。芳ばしい匂いが店内に広がる。隣りの席で飲んでいるおじさんが「懐かしいな。こっちも焼いてもらおうか」と便乗する。

練炭ストーブで焼かれるヤンミリの半干し

 ヤンミリやコドゥンオ(サバ)、イミョンス(ホッケ)などの魚の塩焼きは、日本の人なら熱燗を連想するのだろうが、韓国人ならマッコリやソジュ(韓国焼酎)を合わせたくなる。

焼きあがったヤンミリ