文/光瀬憲子

 

 世界には、他国の人が「!」となる不思議な見た目の食べ物や独特の臭いのする食べ物がある。日本の納豆やくさや、韓国のホンオ(エイ)料理、スウェーデンのシュールストレミング(塩漬けニシンの缶詰)などがそれだ。匂いの強いものに共通しているのが「発酵食品」であるということ。

■臭豆腐、そんなに臭い?

台湾の定番屋台フード、臭豆腐。豆腐の揚げ具合やサイズ、かけダレの味、付け合わせのキャベツ漬けで各店のオリジナリティが出る

 臭いの強いものの台湾代表は、名前に「臭」の字が冠された臭豆腐。発酵させた豆腐を揚げたものだ。台湾料理のイメージが強いが、もとは中国南部発祥の食べ物だと言われている。

 台湾に行くことが難しくなり、台湾の空気を感じられる食べ物を自宅でいろいろ作ってみたが、異臭騒ぎになっては困るので臭豆腐にはまだ挑戦できていない。

 はたしてどれほど臭うのか? 実は私自身はあまり臭豆腐を臭いと感じたことがない。20代の頃、台湾人に「臭いから覚悟して食べて」と言われたものの、カリッとした揚げ豆腐に甘くてしょっぱいタレがかかった臭豆腐にそれほど違和感をいだかなかったのだ。

 ところが、台湾で暮らし始めて数年たった頃、麻辣臭豆腐(煮込み臭豆腐)というものが屋台で流行り出した。発酵させた豆腐を揚げるのではなく、真っ赤な辛い汁の中で煮込む。どういうわけか、これはものすごく臭う。夜市に漂う動物園のような臭いに圧倒された記憶がある。同じ加熱調理のはずなのに、揚げるのと煮込むのではこれほど違うのか?

 同じ芋焼酎でも、ロックで飲むとツーンと鼻の奥に香りが届くのに、お湯割りにすると芋がふわっと香り、その香りだけで酔いそうになる。その違いに似ている気がする。

強烈な発酵臭を放つ麻辣臭豆腐