欧州で唯一、神社本庁に承認された『サンマリノ神社』の参拝記。今回は神社を拠点に広がっていく日本とサンマリノ共和国の交友の輪を支える人々についてご紹介したい。
(*本記事はwebマガジン「TABILISTA」に2020年1月に掲載されたものです)
5世代に渡って守り抜かれてきた豊かな大地
サンマリノ神社に参拝するにあたり、神社がある敷地を所有するアグリツーリズモ『Podere Lesignano/ポデーレ・レジニャーノ』に宿泊させていただいた。 サンマリノ共和国の首都サンマリノ市のに位置するセラヴァッレは、同国内で最も大きく、人口も多い行政区。ポデーレ・レジニャーノはそのエリア内に7ヘクタール以上の葡萄畑、オリーブ畑を所有している農場で、ステファノ・ヴァレンティーニ氏とそのご家族が経営している。サンマリノ初日、アグリツーリズモにチェックインした後、ご一家のマンマであるガブリエッラさんから夕食に招かれた。ありがたくご招待を受け、一家団欒のテーブルでこの土地と神社に関するお話を色々と聞かせていただいた。農場主であるステファノさんはバイオ農業の専門家で、5世代に渡って受け継いできたこの土地で主としてワインとオリーヴオイルを生産している。サンマリノで農業に従事する人口は決して多くはないが、国土の約20%は農地であり、ブドウや小麦、オリーヴ、野菜、葉タバコなどが作られている。1800年代の館があるステファノさん一家のアグリツーリズモでは、農業を通じ、教育、農村観光、異文化交流を目的とした様々なイベントを開催しているという。





夕食の席で「御先祖代々の土地に、なぜ神道の神社を建立することになったのですか」と私が尋ねると、ステファノさんは、「話を聞いたのは本当に偶然だった」とその経緯を語ってくれた。
「人づてに、“カデロ大使が神社を建てるための土地を探している”と聞いたんだ。神道がどういうものか知らなかったけれど、話を聞くと“宗教を問わず、全ての人を受け入れる祈りの場”として神社を建てたいということだった。うちには広い土地があるし、畑として使っていない敷地もあるから、そこで良ければ自由にお使いください、と申し出たんだよ」。
なんとも寛大な申し出である。ステファノ氏が提供してくれた土地は、神社建立にあたって神社本庁から下見に来た専門家、ブリガンテ宮司など、誰もが一目で「ここだ!」と思った場所だったそうだ。静かで穏やかな空気が流れる葡萄畑とオリーヴの木々に囲まれた小高い丘の上に立つ神社。伝統的な日本の建築方法で建てられた本殿は、地中海ならではの自然風景の中にしっくりと溶け込んでいる。




