というわけで、大きなものは着々と整っていったが、ほかにも、座布団や館内着の追加発注、増設された小上がりに置く棚やソファ、別邸の客室に入れるお茶セットの湯飲み、それを載せるトレイに砂糖やミルクを入れるミニバスケット、さらにそれらを格納するための倉庫棚、と必要なものは果てしなく広がっていく。

 メジャー片手に館内をうろうろし、買うべきものをリストアップして収納上手なマネージャーに格納場所と格納グッズを手配してもらい、私は実際に行ってみたほうがいいものを買いに出かける。合間にはもちろん館内の掃除や続々と届く物資の整理にダンボールつぶしである。

布団が届いた日は全部広げてレイコップ。布団は2枚重ねて欲しいという外国人ゲストが多いので、定員数×2の布団を手配したが、その量にみんな若干びびる.同時に休館に備えてホコリ除けの準備もする

■感染対策と日常の狭間で

 2020年5月末、ほぼ全ての準備が完了した。

 しかしその後は皆さんご存知のとおりだ。

 波がありつつも観光客が元通りに増えることはなく、買ったはいいが人が来ないので使われないものもあるし、感染対策で使用自粛しているものもある。たとえば増設した小上がりの棚には販売グッズやおもちゃを置くつもりだったが、いまも空のまま。不特定多数の人が触れるものは減らしておきたいからだ。

 いっぽう、閉架にしていた本棚やフリードリンク棚は需要の高さも考えて開放した。複数の手指消毒剤を目につきやすいところに置き、スプーンは使い捨てのマドラーに、はちみつは使いきりのミニパックに、茶葉はティーバッグに……徹底させるならマグカップを紙コップにしたほうがいいのかもしれないが、飲み心地のいいカップや茶器、ティーポットは心を豊かにすると私は思う。好きなタイミングで好きなものを選べる、という自由さもひとつのぜいたくだ。

 感染対策は宿屋の義務だが、ゲストからしたら宿には非日常、リラックスを求めたいところ。どこに落としどころを見つけていくのか、考え続けるしかない。

 まったくもって、めんどくせえ。

 ぶつくさいいながらも最新の雑誌や京都の書籍をゲスト(とウチのスタッフも)が興味深げに閲覧していたり、お茶を選んだりしているのを見ていると、やっぱりやってよかったなー、なんてひとり満足感に浸るのであった。





無料のドリンク棚は本館と別邸に1カ所ずつ。本棚は雑誌と書籍のコーナーがある。どれも24時間利用OK、部屋への持ち込みOKだ
好評のご近所マップも改訂した。だがコロナ禍でお店の入れ替わりが多く、また作り直さねば、とタイミングを計っている