イタリアでも義理チョコをあげるのか? ヴァレンタインデーが近づくたび、この質問をする日本の友達が毎年必ず一人はいる。言うまでもないことだが、イタリアには義理チョコは存在しない。と言うより、イタリア人には「義理チョコ」という概念そのものが理解できないだろう。また、ヴァレンタインデーは「女性から男性に告白する日」でもない。イタリアでは、愛の告白はヴァレンタインデーに限らず、男性も女性も365日毎日行っているのだから。こう言うと、次に出てくるのは「じゃぁ、ヴァレンタインデーには一体何をするの?」という質問であるが、これについては私も今ひとつ理解できていない。悲しいかな、イタリアに20年近く住んでいて、イタリア人の夫もいるのに、私には「ヴァレンタインデー」を祝った経験が一度もないのである。そこで、「ヴァレンタインデーとはなんぞや?」と言う疑問を解決するため、この日の由来となっている聖ヴァレンティーノが眠るテルニの街を訪れてみることにした。

 

新興住宅地の一角にある大聖堂

 ヴァレンタインデーが目前に迫った平日、ローマから各駅電車に1時間ほど揺られ、テルニの駅に降り立った。駅構内のバールに入り、バスのチケットを買いがてら聖ヴァレンティーノ大聖堂への行き方を尋ねると、バールのオヤジは「俺は知らない。だが、幸いちょうどここに市バス路線のエキスパートがいる。彼なら絶対知っているぞ!」と言い、客の一人の老人に向かって叫んだ。「おーい! 聖ヴァレンティーノ大聖堂に行くのは何番のバスだ!?」すると、カウンターの端でカフェを飲んでいた恰幅の良い老人が、「5番だ! 5番に乗れ!」と叫び返してきた。居合わせた他の客達も頷いているところを見ると、間違いなさそうだ。オヤジと老人にお礼を言って、早速バスターミナルへ向かった。

 5番のバスは「Ospedale(病院)」行きと書かれているだけで、どこで降りれば良いやら見当もつかないので、運転手に「バジリカ(大聖堂)の停留所に着いたら教えてもらえますか?」と頼んで乗り込んだ。地図がないので運行ルートが全くわからないが、車窓を眺めているとバスは中心街を抜け、川を渡ってどんどん郊外へ向かっているように見える。このまま乗っていて大丈夫だろうか、と不安になったその時、運転手が、「シニョーラ! 次の停留所で降りたらまっすぐ坂を下って行くんだ。200mくらいでバジリカの入り口に着くから」と声をかけてくれた。

 バスを降りると、いかにも新興住宅地らしい高層マンションの群れと広い道路、住民達が犬を連れて散歩している公園があるだけで、大聖堂の影も形も見えない。一人で歩いてきたら絶対に迷ったと思うが、ありがたいことにバスを一緒に降りた女性が「この道をまっすぐ下って行けば左手に教会の裏側が見えるから」と声をかけてくれたので、どうにかたどり着くことができた。

 







聖ヴァレンティーノ大聖堂に一番近いVia F.Turati (ヴィア・トゥラーティ)の停留所(上)。新興住宅地のど真ん中、ロータリーの中央に聖ヴァレンティーノの像が立っている。左手にこの像が見えたらその先の停留所で降りる(中上)。大聖堂への入り口は公園のようになっているので見落とさないよう注意が必要(中下)。聖ヴァレンティーノ大聖堂のファサード(下)。