文と写真/藤井誠二 

 

1月20日 [THU]   

 今年に入って初めての沖縄。昼過ぎのフライト。機内で「journalism」(2021年4月号)月号に掲載されている、昨年12月に亡くなった元朝日新聞の名記者・外岡秀俊さんの[ メディアは「中立・客観」を離れ、開かれた「公正」報道を目指せ]という論考をキンドル版で読み終わったら寝落ちした。着いた足でモノレールに乗ってジュンク堂書店に寄り、『沖縄ひとモノガタリ』の平積みの棚を見る。うん、売れているみたいだ。

 『沖縄ゼネスト』(2021)という溶樹書林と地元の古書店&版元が刊行した冊子と、長嶺幸子さんの詩集『Aサインバー』(2021)を買う。両方とも自費出版だと思うが、そういうものもきちんと置いていて、手に入るのがジュンク堂書店のありがたいところだ。渡瀬夏彦さんの『沖縄が日本を倒す日』(2022)も購入し、一階のカフェで読む。そこでメディア関係の方と仕事終わりの森本浩平さんと合流。森本さんの家で会費制豚しゃぶ飲み会をやる。新型コロナは、沖縄県は新規感染者は今日時点で1309人。1月12日から「まん延防止重点措置」指定がなされている。


『沖縄ひとモノガタリ』
「琉球新報」2019年1月~2021年12月まで連載された人物ルポルタージュ「藤井誠二の沖縄ひと物語」に10人の書き下ろしとポートフォリオ写真を新たに追加し書籍化。
人々が紡ぐモノガタリは潮風が吹き、緑がそよぎ、唄も聞こえてくる。 なにやらこの人たちに会うためにページをめくっている気分になる。
ご購入はコチラから→琉球新報ストア

 

1月21日 [FRI]   

 昼前に起きて、島豆腐を炒めて食べる。ちょうど食べ終わったあとにフリージャーナリストの加藤隆祐さんから『フラッシュ』のウェブ版に載せるための、リモート取材を受ける。先日、東大の受験会場で起きた高校二年生による刺傷事件について。加害者はぼくの40年も後輩だ。事件後、文春オンラインが学校名を明かしていたが、ぼくもSNSで明かした。学校側がだしたコメントにあきれたからだ。コロナによる混乱が要因だという。事実関係がわからないうちにあまりにも安易すぎないか。マスコミ対応は、ぼくの親しい教員がしているらしいが、わからいならわからないと言った方がいい。学校に直接的な責任があるかどうかもわからない。卒業後も付き合いがある信頼している歳の近い先生がいるが、混乱をしているだろうな。加害者は17歳。死者はいまのところ出ていないらしいが、三人を用意していた刃物で刺し、最寄りの地下鉄の駅で発火物を発火させていたという疑いもあり、計画的で悪質なので、たぶん家裁から検察官へ逆送致されるだろう。少年法によって情報を覆い隠してしまうのではなく、できうる限り公開されるべきだと考える。

 夕刻までずっと仕事をして、上原岳文さんと深谷慎平さんと栄町で合流。上原さんにはいま資料収集などの仕事を手伝ってもらっているので、その受け渡しと、お礼の食事。栄町「チェ鳥」で焼き鳥を食っていたら、知り合いが何人かやってきて、新年のご挨拶。トイレの内側に『沖縄ひとモノガタリ』のチラシを貼ってくれていて、感謝。大将の崔さんに一冊、プレゼント。そのあと上原さんが「アラコヤ」に行ってみたいと言うので、新年のご挨拶がてらかるく串を喰う。ついでに「トミヤランドリー」にも新年のご挨拶に行ったら、「アラコヤ」グループの総帥・松川英樹さんが飲んでいて、彼が一推しの熊本県産の海苔で刺身を細巻き風に巻いた寿司を喰う。こりゃ、海苔が美味いわ。上原さんがとたんにつぶれて眠ってしまったので、解散。スーパーに寄って食材等を買って帰還。

 

1月22日 [SAT]      

 昼前まで惰眠をむさぼり、島豆腐と豚肉と白菜キムチを炒めて食べる。昨夜、上原さんから受け取った資料を読む。じつにきちんと整理してある。彼はたまにウーバーイーツで仕事しているそうだが、こうしたリサーチャーのような仕事に向いていると思う。前に彼がおこした鼎談の文字おこしを見たことがあるが、ていねいな仕事ができる人だなあと思っていた。

 原稿を書きながら、ダメもとで依頼していた取材のアポが取れた。御存命だったことはもちろんのこと、とてもうれしい。かなり高齢の方なので、連絡先をあちこちのツテを頼ってさがしてもらったかいがあった。さがしていただいた方々にも感謝しなければ。ゴミ集積場にゴミを出しに行く以外は外出せず、原稿を書いたり、仮眠を取ったりしていると日付が変わる時間になっていた。

 

1月23日 [SUN]         

 自炊して、ひたすらパソコンに向かう。夏までには出さねばならない書き下ろしの新書のためだ。腹がへったらまた自炊。読まねばならない資料を机の周辺に積み上げて、付箋を貼りまくっていく。何十年も前の資料の黄ばんだページをめくるのは嫌いではない。

 夕刻に、普久原朝充さんと晩飯を食おうということになり、和食居酒屋の栄町「潤旬庵」へ。マスターに新年のご挨拶。普久原さんも資料収集の達人というより、県立図書館利用の達人でもあるので、ビールを飲みながらいろいろ教えてもらっているうちに夜が更けていった。この店はコロナ以前から席と席の間にしきりが(パーティション)あり、ドアも開けっ放しになっているので比較的安全かもしれない。

 帰還してしばらくすると、名護市長選と南城市長選の結果が判明。いずれも保守系が勝利。名護市長選に関していうと─出口調査の結果だと思うが─若い世代ほど保守系(現職)支持が多い。ニュースでは有権者の声として「辺野古はほぼ埋まってしまっているのでいまさら反対しても仕方がない」「子どもの医療が無料等の(基地交付金を原資とした現職の)対策がよかった」というものが紹介されていた。しかし、辺野古新基地に関してだけは、有権者の六割以上が「反対」の意思を示していることがわかった。でも争点にならない。いったい誰が勝ったのか。国が勝っただけなのか。ツイッターを見ていたら、沖縄の友人の一人が「沖縄の政治は保革が選挙のたびにひっくりかえってきた歴史がある。べつに驚くことじゃない」と書いていた。

 

1月24日 [MON]  

 10時頃起きて、ゆし豆そばをつくろうと思ったが、沖縄にそばがないので、細めのうどんで代用。午後から新都心のシネQで映画「ミラクルシティコザ」を観る。交通事故死した元ロッカーの老人が孫の体と入れ代わり、孫が祖父が全盛期だった時代の「コザロック」の世界にタイムスリップするというもの。知り合いも何人か出ていた。「コザ騒動」も描かれ、ベトナムに送られる米兵の視点も盛り込まれている。決して「反戦映画」というテイストではないが、コザロックの底流に流れる「戦争」やアメリカ支配の理不尽が伝わってくる。ジョージ紫さんや喜屋武幸男さん、宮永永一さんら現役のコザロッカーが協力していた。私は喜屋武さん始め当時のロッカーたちに取材したことがあるが、当時のハードロックの激しさが作品の中にもっと欲しかったなあというのが印象。

 資料収集を頼んでいる20代の上原岳文さんから連絡があり、昨日頼んだ資料のコピーがもう終わったというので、小禄まで取りにいく。昨日から今日にかけて県立図書館に行って大部の資料を借り出しコンビニでコピーしてくれたという。彼の仕事の早さに驚く。そのあとは、栄町「ちぇ鳥」で地元の女性と「おとん」の池田哲也さんとかるく一杯。「おとん」で販売してもらっている拙著にサインをする。