文/光瀬憲子

 

 昔、中国大陸北部では粉もの、南部では米が食されていると学んだので、台湾でも当然、主食は米だろうと思っていた。でも、90年代に初めて台湾に渡ると、実際は米よりを食べる機会が多いように見えた。今回から2回に渡って台湾の麺を俯瞰してみたい。

■台湾の多彩な麺々

台北、景美夜市の麺屋

 台湾の大衆食堂。天井からぶら下げられた品書きに麺の文字が並んでいる。陽春麺、切仔麺、意麺、麺線、米粉、米苔目、粄條……実にさまざまな麺があり、どれを食べようか悩むほどだ。

 旅行者にもおなじみの牛肉麺は、細めのうどんのような白い麺が使われることが多いが、日本のうどんほどコシがなく、あっさりしている。濃厚な牛肉麺のスープには淡白な太麺が合うのかもしれない。

 一方、鴨肉や山羊肉を使った薬膳スープには細い麺線を合わせる場合が多い。スープとしてそのまま飲むこともできるが、腹持ちをよくするため、プラス10元や20元で自分の好みの麺を加えることができる店が多いのだ。

嘉義の牛肉麺。濃厚だがクセのないスープに柔らかな牛肉がたっぷり。主役は牛肉。麺はあくまでも脇役なので主張し過ぎていない
高雄で出合った鴨肉の漢方スープに麺線をプラスしたもの。細い麺線に奥深い漢方の風味が染み込んで美味

 スープと麺の組み合わせが自由度が高いところが、台湾の外食文化のおもしろいところだ。台湾人は美味しいものに対するこだわりはあるが、店主が自分の好みを客に押し付けることは少ない。客側の選択肢が豊富なのだ。たとえば餃子や小籠包のタレ、豆乳の味付けや温度、そして麺の種類に至るまで、客が自分の好みのものを選べるようになっている。調味料を置かないこだわりのラーメン店が珍しくない日本と比べると、自由度が高いといえるだろう。

 余談だが、台湾の男性にもそんなところがあって、「俺についてこい」タイプよりも、「君はどれがいい?」タイプが圧倒的に多い。選択肢を用意してくれるところは、台湾の食堂も男性も共通しているようだ。