文・写真/下川裕治

 

 昨年(2021年)の11月から12月にかけ、世界一周の旅に出た。日本を出発してからのルートは、タイギリシャトルコ、メキシコ。途中、ドイツのフランクフルトとカナダのバンクーバーでトランジットがあった。

 日本を発った11月の中旬、オミクロン株がアフリカで広まりはじめているという報道があった。しかしまだ対岸の火事だった。しかし新型コロナウイルスの感染は気はつくと広まっているような速さがある。とくにオミクロン株の感染力は強かった。

■世界一周の旅の間にオミクロン株の感染が広がった

 世界一周の旅をつづけるうちに、オミクロン株の感染は世界に広がっていった。ギリシャやトルコに滞在していた頃、すでに欧米ではオミクロン株の感染者が出ていた。

 大きな流れでみれば、新型コロナウイルスは弱毒化の道を歩んでいた。中国の武漢で発生した新型コロナウイルスが世界に広まりはじめた頃、専門家は一般論としてこういっていた。

「収束まで3年。ウイルスは少しずつ弱毒化の道を歩んでいく」

 いまになって振り返ってみれば、大筋ははずれていない。しかし人々は、3年と聞いたとき、それを信じようともしなかった。そんな民意を受け、国も対策に走る。なんとか早く収束させようと動いていく。しかし、さまざまな対策はほとんど成果を生まなかった。はじめの頃は、どの国がうまく抑え込んでいる……といった会話があったが、最近はそんな会話も虚しく響く。つまり対策が成功した国はどこもないということなのだ。

 人間の慌てぶりを尻目に、ウイルスは法則通りに進んでいた。

 しかし失敗を繰り返してきたという経緯もあり、政府や専門家は弱毒化というセオリーを信じることはできなかった。あくまでも未知の変異種といういうしかなかった。

 欧米の国々が弱毒化という流れを読んでいたかというと、そうでもない気がする。それ以前に、欧米は規制緩和に舵を切っていた。ワクチン接種とPCR検査で陰性が証明されれば隔離が免除される国が多かった。

 世界一周が可能になったのも、この規制緩和のおかげだった。そのなかでも、ワクチン接種証明があれば入国できる国を選んだ。PCR検査も必要になると、時間と費用がかかった。