悪魔の扉の謎

 錬金術の秘密を探るのはあきらめ、ここから数分の場所にある黒魔術のスポットへ行ってみることにした。「悪魔の扉」と呼ばれる門扉を備えた館があるらしい。地図を見ると広場の中央から伸びた道をまっすぐ行けばその扉に突き当たるので、いくら方向音痴の私でもここで迷うことはありえない。はずだったのだが…。

 歩いても歩いても、悪魔の扉が見当たらない。見落としたか? いや、まっすぐ進んで行けば角の右手にその扉はあるはず。何度地図を見直しても一本道だ。嫌な予感がする。

 以前、竜神伝説を追って長野の戸隠神社へ取材に行った時、20分あれば通り抜けられる一本道を2時間も歩かされた経験がある。後で地元の人にその話をしたら「ああ、あんた、そりゃキツネに化かされたんだよ」と言われたことを思い出す。まさかトリノにもキツネがいるのか? 気を鎮めようと方向を変えてバールに立寄り、カフェを一杯飲んでリフレッシュ。さて、もう一度トライしてみるか。

 重苦しい雨雲におおわれた夕暮れ時、再び悪魔の扉があるはずの場所へ行くと、目の前の建物の入り口に突然パッと明かりが灯った。重厚な木製の扉の中央、オレンジ色の光に不気味に反射する金色の小さなドアノッカー。あった!! この扉こそ、ある夜突然何もないところから出現したといわれている悪魔の扉である。伝説によると、ある夜、一人の魔法使いの弟子がこの地でサタンを呼び起こそうとした。サタンはそれを不快に思い、魔法使いの弟子を煉獄へと引きずり込んで永遠につなぎ止めてしまったという。その時にサタンとともに出現したのがこの扉だと言われている。なにやら背筋が寒くなって来た。煉獄へ引きずり込まれる前に宿へ帰るとしよう。

 

ある夜突然、何もないところから出現したという伝説が残る「悪魔の扉」。現在、この館は銀行のオフィスになっている。中央の菱形の枠の中には、金色の小さなドアノッカーが禍々しく輝いている。