強大なポジティヴ・パワーが宿る教会

 トリノ滞在最終日。多くの神秘学者が「ここぞトリノの悪の中心!」と認めているスタトゥート広場へ行くか、反対に「ポジティヴ・エネルギーの泉!」といわれるグラン・マードレ・ディ・ディオ教会へ行くか。聞きかじった話だと、スタトゥート広場はかつて死者の街ネクロポリがあった場所で、その後処刑場としても使われていたそうで、広場には世界中の〝陰極〟が集まっているとか。空を見上げると今日もどんより、朝から気分は暗い。こんな状態で全世界の陰極が集中しているような場所へ行ってなんの得がある? せめて心の中はすっきりきれいにしてトリノを離れようと、白魔術のパワー・スポットであるグラン・マードレ教会を目指すことにした。

 ポー川と旧市街を見渡す小高い丘の上に建つ教会の入り口に、聖杯を掲げた女神と天使の彫像がある。この聖杯は、キリストが最後の晩餐でワインを飲んだ聖杯を示唆していて、バールの主人の話ではここにポジティヴ・エネルギーが溜まるのだそうだ。その聖杯を間近で見ようと彫刻に近づいたところでハッと気付いた。女神の目線の正面にあるのはもう一つの白魔術スポット、モーレ・アントネッリアーナだ。今ではモダンな映画博物館になっている旧シナゴークはトリノの街のシンボル。だが神秘学者の解説では、天にそびえる細長い鉄塔は避雷針の役割を果たしていて、トリノの街に充満する悪のエネルギーを吸い取っているのだそうだ。なるほど、こうしてみると実によく考えられて設計された街なのだなと感心した。

 旅の締めくくりにグラン・マードレ教会に入って白魔術のパワーをいただくことにした。丸い礼拝堂の中には誰もおらず、私一人。マドンナ像に歩み寄ったその時、荘厳なパイプオルガンの音が響き渡り、礼拝堂を満たした。一心不乱にオルガンを奏でる神父さんは、私の存在には気付いていないようだ。バッハの曲に心をゆさぶられながら、白金に輝くマドンナ像に魅入った。

 

トリノのシンボル「モーレ・アントネッリアーナ」。現在はモダンな映画博物館になっている。屋根にそびえるのは悪のエネルギーを吸い取る避雷針。

 

白魔術のエネルギーが満ちあふれていたグラン・マードレ・ディ・ディオ教会の礼拝堂。