文/チョン・ウンスク

  

カラフルな贅沢ビビンパ

 日本の人たちはビビンパ(ピビムパッ)と聞くと、本場全州(チョンジュ)やソウルの有名店で見られる、器の中に花が咲いたようなカラフルなものを思い出すかもしれない。

 

全州の人気店「家族会館」のビビンパ

「家族会館」ではビビンパだけでも野菜がたっぷり摂れるのに、つきだしも豪華

 しかし、あれは観光客向けのちょっと贅沢な料理なので、全州でも地元の人が積極的に食べているとはいえない。20種もの材料をひとつひとつ調理して美しく盛り付けるので、けっして安くないからだ。

 

ビビンパづくりにどれだけ手間がかかるかは全州韓屋マウルの各所で行われている調理実習で実感できる。写真は先生が作ったもの

全州の全羅北道庁の近くにある「古宮談1973」のビビンパは、あらかじめごはんとおかずが混ぜられている

タイリッシュな店内でビビンパを提供している「古宮談1973」 全州市完山区孝子洞1627-1 11:30~20:00 月曜休

豆モヤシをのせただけのものも旨い

 ピビムパッのピビムは「混ぜる」、パッは「ごはん」のことなので、言葉の意味としては「混ぜごはん」だが、全州式だけではなく、韓国にはさまざまなビビンパがある。

 たとえば、家でおなかが空いたが、ちゃんと調理する時間も食材もないとき、私は韓国家庭の冷蔵庫の中にたいていあるナムルやキムチなどのミッパンチャン(常備菜)をごはんにのせ、コチュジャンやチャムギルム(ゴマ油)をかけて、かき混ぜて食べている。これも立派なビビンパだ。

 

慶尚北道、蔚珍(ウルジン)の市場で見かけた豪快ポリパッ。ポリは「麦」を指すので、ポリパッは麦ごはんのこと

 上の写真を見てほしい。

 これは地方の市場で働く70代女性が食べていたビビンパだ。行きつけの食堂でありあわせのおかずをごはんにのせ、テンジャン(味噌)をたっぷりかけている。

 韓国女性は日本男性並みに食べるという俗説を裏付けるボリュームだが、豆モヤシや切干しダイコン、葉トウガラシ、ネギなどが山盛りで、ごはんには麦も混ざっているので、見た目よりずっとヘルシーだ。

 ソウルなら仁寺洞あたりの飲み屋の〆の食事としてたまに見かける、コンナムルパッもビビンパのひとつだ。ごはんに豆モヤシ(コンナムル)とゴマ油と塩をふりかけただけのものだが、酒好きな人にはおおむね好評。

 一方、観光客向けのビビンパはごはんにのっているおかずの種類が多いうえに、味のはっきりしたコチュジャンを加えてかき混ぜるため、何を食べているかわからなくなってしまうという人が少なくない。そのため、シンプルなコンナムルパッのほうが好みという日本人もけっこういる。