文/チョン・ウンスク
カラフルな贅沢ビビンパ
日本の人たちはビビンパ(ピビムパッ)と聞くと、本場全州(チョンジュ)やソウルの有名店で見られる、器の中に花が咲いたようなカラフルなものを思い出すかもしれない。


しかし、あれは観光客向けのちょっと贅沢な料理なので、全州でも地元の人が積極的に食べているとはいえない。20種もの材料をひとつひとつ調理して美しく盛り付けるので、けっして安くないからだ。



豆モヤシをのせただけのものも旨い
ピビムパッのピビムは「混ぜる」、パッは「ごはん」のことなので、言葉の意味としては「混ぜごはん」だが、全州式だけではなく、韓国にはさまざまなビビンパがある。
たとえば、家でおなかが空いたが、ちゃんと調理する時間も食材もないとき、私は韓国家庭の冷蔵庫の中にたいていあるナムルやキムチなどのミッパンチャン(常備菜)をごはんにのせ、コチュジャンやチャムギルム(ゴマ油)をかけて、かき混ぜて食べている。これも立派なビビンパだ。

上の写真を見てほしい。
これは地方の市場で働く70代女性が食べていたビビンパだ。行きつけの食堂でありあわせのおかずをごはんにのせ、テンジャン(味噌)をたっぷりかけている。
韓国女性は日本男性並みに食べるという俗説を裏付けるボリュームだが、豆モヤシや切干しダイコン、葉トウガラシ、ネギなどが山盛りで、ごはんには麦も混ざっているので、見た目よりずっとヘルシーだ。
ソウルなら仁寺洞あたりの飲み屋の〆の食事としてたまに見かける、コンナムルパッもビビンパのひとつだ。ごはんに豆モヤシ(コンナムル)とゴマ油と塩をふりかけただけのものだが、酒好きな人にはおおむね好評。
一方、観光客向けのビビンパはごはんにのっているおかずの種類が多いうえに、味のはっきりしたコチュジャンを加えてかき混ぜるため、何を食べているかわからなくなってしまうという人が少なくない。そのため、シンプルなコンナムルパッのほうが好みという日本人もけっこういる。