● 【生國魂(いくくにたま)神社】
すべてはいくたまさんの「平」から始まった

私にとっておみくじは一瞬吹くそよ風の如し。大吉にはしゃぎ、凶に舌打ちすることはあっても、木に結んだ瞬間内容を忘れる。そのくらいライトな思い入れであった。

ところがある日ふらりと立ち寄った生國魂(いくくにたま)神社が、私のおみくじ観を大きく変えた。

生國魂神社。最寄駅は大阪メトロ谷町九丁目駅

 

生國魂神社は商売繁盛のほか、縁結び、縁切りのご利益があるとして有名だ。大阪では「いくたまさん」と呼ばれ、非常に親しまれている神社である。近松門左衛門の「曽根崎心中」は生國魂神社境内が舞台にもなっている。境内を歩くと、井原西鶴や織田作之助の銅像が出迎えてくれる。




おださく

ただ、おみくじはいたって普通(と思い込んでいた)。よくある筒をガシャガシャ振り、みくじ棒を出し、一七番を引き、美しい巫女さんから紙をいただいた。いつものように、吉かなんかが出ると思いこんでいたのだ。

ところが、そこに書いてあったのは、いつもとは違う文字。

「平(へい)」

 
商いが散々である

私は5度見した。「平」? 印刷間違いだろうか。が、その日は急いでいたこともあり、写真に撮り、木に結び付けて帰った。

 

そして一か月後、生國魂神社の近所による用事があり、まさか二度は無いよね……とおみくじを引いてみた。ところが、またも出た!!

「平(へい)」……。

番号も違うのに……

どういうことなのだろう。快晴の神社の境内で、私は立ち尽くした。

スマホで検索すると「平」は、生國魂神社をはじめ、埼玉県の氷川神社、長野県の戸隠神社、京都府の下鴨神社、京都府の石清水八幡宮大阪府の住吉大社、広島県の厳島神社、香川県の金刀比羅宮の8社しか出ないという。さらに、その神社でも「平」が出る確率は2%……。

ところが、家に持ち帰り読んでみるものの、そんな確率のわりには、今ひとつ振るわない内容なのである。努力すればオッケーだし待ち人もやがてくる。まあそれはいい。が、失くしものは出そうにないし、旅立ちも縁談も慌てるなという。フリーランスという危うい職業にとって一番気になる商いに至っては「悪し」とバッサリではないか。

それもそのはず、この「平」は凶と吉の間くらい、「うーん、まあまあ」という運勢のようだ。たった8社、しかも2%なら「超大吉」を混ぜた方がワクワクしません?! いや、それほど平穏というものの貴重さを教えてくださっているのだろう。

深い……。おみくじ深すぎる!

しかし、じゅうぶん平々凡々な私が「平穏に生きよ」という神様のお告げを2度もいただくのはなにか意味があるのでは。

宝くじを買えば、もしかして当たるタイミングなのかも。私に平穏ではないセレブな日々が待っているからこそ、神様は念を押したのではなかろうか!

そう思い、運試し宝くじを購入。

見事当たりました! 200円……。どこまでも平な私であった。

 ちなみに生國魂神社は「平」のほかにも「吉凶未分(よしあしいまだわからず)」という珍しいおみくじが入っているそうだ。「前向きに考えれば良い方に進んでいき、マイナスに考えれば悪い方へ進んでいく」という意味なのだとか。「ほらほら、ポジティブにポジティブに。笑う門には福来る!」と神様から煽られるようなイメージだろうか。

ぜひ、出してみたい。いくたまさんに通うことになりそうだ。