2022年も3月11日がやってきました。縁あって宮城県石巻市の観光コンテンツ発信業務を請け負ったのが2018年の冬でした。それから約3年、震災から11年目を迎える「東日本大震災石巻市追悼式」に参加することになりました。取材当時にお世話になった石巻の皆さんと再会するにあたり、2018-2019にお届けした「石巻・牡鹿半島/絶景・美食・縄文」のアーカイブ記事をお届けします。
これら記事を取材した頃からまちはどのように変わったのか、その模様もサイト内で紹介しようと思います。

 

宮城オルレ


文と写真/編集部

 

 

「宮城オルレのオープニングセレモニーがあるんですけど、参加しませんか?」

「オルレ? オルレって何ですか?」

 

 地方食品のブランディングを手掛けているA氏から虎ノ門ヒルズ2階にあるカフェでお誘いを受けた。この日は、ここで地方食品通販の見本市が開催されていたので、何か美味しい食品のことかと話に食いついた。しかし、食べ物の話ではなかった。トレッキングの話だったのだ。

「オルレ」とは韓国済州島を発祥とする徒歩旅行の道のこと。済州の方言で「通りから家に通じる狭い路地」という意味だ。海岸線や山などの自然、民家の路地などを身近に感じながら、自分のペースでゆっくり楽しんで歩くトレッキングコースで、現在、済州島には10~20キロの24コースがあり、2010年度に済州島を訪れた観光客約700万人のうち約200万人がオルレを歩いたという。

 

 A氏はたたみかける。

「今度、宮城県に日本で2番目のオルレコースができるんです。タビリスタの取材も兼ねて一緒に歩きましょうよ。トレッキングといっても散歩みたいにのんびり歩く感じですから、体力に自信がなくても大丈夫だと思いますよ」

 

  済州島で始まった「オルレ」は、「モンゴルオルレ」、「九州オルレ」へとその姉妹道が広がり、「宮城オルレ」はそれに続くものだ。興味はあるが、日頃の不摂生のせいで、山歩きには尻込みする。なにせエレベータ―が点検中だっただけでものすごいショックを受けるくらいだ。大丈夫だろうか。

 

「途中で炊き出しみたいなものも提供されるみたいですよ。東北はお酒も美味しいですし…云々」

 

 2018年10月初旬、記者は宮城県東松島市にある宮野森小学校のグランドに立っていた。東北の地酒という魅力が体力の不安に勝ってしまったのだ。

 

復興のシンボルともいえる斬新なデザインの校舎が秋晴れの森に調和している。この宮野森小学校の校庭がオープニングセレモニー会場となった。

 宮野森小学校の最寄駅である野蒜は仙台からJRの「仙石東北ライン」快速で約38分。震災後に高台に移転し新設された真新しい駅だ。前に東松島を訪れた時、仙石線は高城町で折り返し運転をしていた。2011年3月の震災で被災したJR仙石線は、2015年の5月に長い間不通だった高城町~陸前小野間の工事が完成して全線復旧を果たす。なかでも陸前大塚~陸前小野の区間は、東松島市の復興計画に従って内陸側の高台に建設中の「野蒜北部丘陵地区」へ移設して新線が建設され、同じ区間にあった東名、野蒜の両駅も同時に新線へ移転したのだ。旧線からの直線距離にして約500mほど内陸に移された形だ。

 そして「仙石東北ライン」というのは、仙石線が全線復旧したのと同時に開業した新しい運転系統で、仙石線と東北本線を直通する。松島駅付近で近接していた仙石線と東北本線との間に約300mの「接続線」が建設され、仙台~石巻間を東北本線経由で特別快速、快速列車の運転が始まり、県庁所在地の仙台と宮城県第2の都市である石巻へのアクセスが飛躍的に向上した。鉄道ファンならば、ご存じかもしれないが、新造のディーゼルハイブリッド車両が全列車に投入されていて乗り心地も快適だ。

 「宮城オルレ奥松島コース」のオープニングセレモニーが行なわれた宮野森小学校は、この「野蒜北部丘陵地区」にある。校舎は、C・W・ニコル・アファンが監修を手がけ、「復興の森作りとニコルの森の学校プロジェクト」の集大成とも言える大型木造建築物だ。このプロジェクトでは東日本大震災により破滅的な被害にあった野蒜小学校と旧宮戸小学校との合併によって新しくなった小学校を中心に、子供たちへ託す未来が希望の地となるよう高台全体の再建を行なっている。この地区に新設された東名、野蒜の両駅を中心に道路や住宅が整備され、新たな街づくりが着実に進んでいる印象を受けた。

 

陸前小野駅で仙石線の初代「マンガッタンライナー」と遭遇。2003年(平成15年)JRと石巻市が協力して実現した。毎週日曜日に運航されている。

「奥松島コースオープニングセレモニー」

 

 「宮城オルレ」は、気仙沼市に「唐桑コース」、東松島市に「奥松島コース」という二つのオルレコースが設けられているのだが(現在は「大崎・鳴門温泉」「登米」が加わり全4コース)今回参加したのは「奥松島コース」のオープニングセレモニーだ。快晴の下での盛大な式典だった。来賓には宮城県の村井知事や東松島市の渥美市長ら錚々たるメンバーが集まり、韓国から済州オルレの提唱者で社団法人済州オルレ理事長の徐明淑(ソ・ミョンスク)さんも来日して「宮城オルレ」の門出を祝った。それにしても……。たしかに立派なセレモニーだが、なぜか若い女子が目立つ。オルレは女子たちにそんなに人気だったのか? と半信半疑に思っていたのだが、その謎はすぐに解けた。

「本日はシークレットスペシャル応援団として、「Hey! Say! JUMP」のメンバーに来ていただいております!」

 司会者の声が響くと、歓声が上がる。そう、ジャニーズの人気者が特別ゲストとして参加していたのだ。宮城県出身の八乙女くんをはじめ、メンバー3人からも宮城オルレへの応援メッセージが贈られ、会場の盛り上がりは最高潮に達した。かなりシークレットな扱いだったので、駆けつけることができたファンの数は少なかったようだが、何も知らずに参加した人たちも歓喜し、イベントは大盛況だった。

 

オープニングセレモニーでカットしたのは日本を象徴する朱色と海に似ている青色のリボン。オルレコースにも結び付けられている。

JR野蒜駅南口のロータリーから無料シャトルバスに乗り込み、スタート地点の「セルコホームあおみな」に向かう。