「石巻・牡鹿半島」連載アーカイブの第5回目は、アウトドアの達人で快適生活研究家の田中ケンさんによる2019年の寄稿ルポをお届けする。被災地を回り、50回以上炊き出しのボランティアをした経験を持つ田中さんにとって、石巻は思いの深い土地でもある。全3回で送るレポートの第1回目は、石巻市街地にある「いしのまき元気いちば」での買い出しから、目的地「おしか家族旅行村オートキャンプ場」を目指した。(2019.1.30)
OUTDOOR COOKING IN OSIKA vol.1
文/田中ケン 写真/岡安啓人(MASH)
目指すは、宮城県石巻・牡鹿半島。
【1日目】
結婚してもうすぐ30年、すでに僕らの子供たち、長女の舞・長男の翔は独立し、夫婦2人の生活へと突入している。プロデュースしている2つのキャンプ場(群馬県北軽井沢のoutside BASE、栃木県那須のファミリーパーク那須高原)はどうにか今のアウトドアブームに乗り好調に回っている。
全国各地で実施しているアウトドアイベントのプロデュースをしているほか、最近ではTV番組にもメインで出演させていただくなど、力の限りアウトドアの普及活動をさせていただいている。近頃は空前のキャンプブームとなり、数年前までオフシーズンと呼ばれていた秋口まで、キャンプ人口が増えている感がある。ありがたいことに日々目まぐるしく、なかなか休む時間を取れないでいた。今シーズン最後を迎える冬、そしてライフスタイルのステージが変わったこのタイミングで、妻を“おもてなし”する旅を、ふと計画してみたくなった。
場所は、宮城県石巻にある、牡鹿半島。この界隈には東日本大震災後、幾度となく炊き出しのボランティアで訪れた場所である。あれから数年。いつかまた、という思いがあったのは確かだ。現在の復興の様子を2人で確認したかったというのもあり、今回の場所でプランニングを立てた。
“おもてなし”のテーマは、3つ。
行き先は決まった。
次は「どう、もてなすか」をざっくりと説明しよう。流石に夫婦互いにいい歳になったし、無理は禁物。そう、僕の肩書きは、快適生活研究家。まことに身勝手な肩書だが、この肩書のおかげでいろいろと得をしている。そこで掲げたテーマが以下の3つである。
東京からロングドライブで向かうため、かつ、もう、寒い時期に突入!
極力設営や撤収の手間を省きたい。というわけで
ひとつ目は、
「テントではなく、ケビン(ロッジ)に宿泊をする」
ふたつ目は、
「アウトドアで美味しい食事を作り、食す」
せっかく訪れる地、そこで手に入れられる食材にはこだわりたい。酒も一緒。
牡鹿半島では新鮮な魚介類のほか、シカ肉も手に入れられるという。これを食べないで何が旅だ!
最後の3つ目のテーマは、
「絶景を散策」だ。
はるばるやってきたのだから、美しい自然を肌で感じたい。できればちょっとしたトレイルでもあって、体を動かしながらというのが理想だ。
地元の食材だけで、アウトドアクッキング。
まずは、買い出し。
石巻の食材としては「牡蠣」や「鯖」をはじめとした、石巻港で水揚げされる海産物。これはハズせない。他の食材はどうするか?
そこで向かったのは、地元の食材が揃う「いしのまき元気いちば」だ。ここは、旧北上川のほとり、石巻の中心市街地に2017年の6月にオープンした施設。食事とお買い物が楽しめる一大マーケット。1階は、石巻圏や三陸ブランドがそろうお買い物ゾーンになっている。約1000アイテムものが揃っているという。なかでも鮮魚や水産加工品は、「さすが石巻!」という品ぞろえとクオリティ。見ているだけでレシピが次々と頭に浮かんでくる。地元の畑から直送の野菜や果物も豊富に揃っていたから、買い出しが楽しくてしょうがない。お米も地元産の「ササニシキ」を手に入れることができた。
何を作るかは、後ほどご紹介することにして、牡鹿半島の先端にあるキャンプ場を目指す。





「いしのまき元気いちば」
石巻市、食品加工関連16社、地元料理店4店、 地元企業8社他が一同に集まり、旬の鮮魚、水産加工品から、農産品、地元の物産品、三陸地域や震災復興応援地域の特産品などを豊富に取り揃えている。また2階には約140席のフードコートもあり、石巻の旬をその場で味わえる。すぐそばには「石ノ森漫画ミュージアム」があり、三陸・石巻地域の「元気」と「おいしい」をまるごと堪能できる市場だ。1時間無料になる大型市営駐車場や観光バスの無料(5台まで)駐車場も完成。 [住所] 石巻市中央二丁目11-11