アドリア海にポツンと佇む港町

 テルモリという町を知らなかった私は、早速地図を確認した。観光地としてはあまり馴染みのないモリーゼ州の州都カンポバッソからアドリア海側へ向かって約60km、プーリア州のバーリ、アブルッツォ州のペスカーラという二つの大きな町の中間に位置している。町の地図を見てみると、鉄道の駅の周りには整備された近代的な新市街が広がり、その先に突き出た半島にボルゴと呼ばれる古い集落がある。ダッラーラ教授が言っていたADは、どうやらこのボルゴの中にあるようだ。

 今日の宿泊先はLocanda Alfieri(ロカンダ・アルフィエーリ)というAD、明日はもう一つのADであるResidenza Sveva(レジデンツァ・スヴェーヴァ)に泊まることになっている。賑やかな商店街が続く新市街を抜け、中世時代の煉瓦造りの城壁に囲まれたボルゴに入ると、周りの空気が一変した。平日のお昼時、ボルゴの中はしんと静まり返って物音一つしない。ロカンダにチェックインすると、女主人のマヌエラさんに「ちょうど1部屋空きがあって良かったわ。今日は満室なのよ」と言われて驚いた。正直なところ、夏のバカンスシーズンならいざ知らず、2月のオフシーズンの平日にこんな僻地(ごめんなさい!)の小さな集落の宿が満室になっているなんて信じられなかったのだ。

 私が正直にそう話すと、マヌエラさんは笑いながら、「そうでしょうね。確かに4〜9月のバカンス期は週末にかけて海を訪れるお客さんでいっぱいになるけれど、冬季はビジネスマンの利用が中心だから逆に平日の方が混んでいるのよ」と言った。テルモリの産業については何も知らなかったのだが、マヌエラさんの話ではテルモリには工業地域があり、フィアットの工場などもあるためビジネスマンが頻繁に行き来するのだそうだ。加えて、ミラノからアドリア海沿いにバーリまで南下する高速道路の中間にあるため、車で移動する人にとってはちょうど良い休憩地点でもある。そのため、閑散期である冬の間もテルモリに立ち寄る人は想像以上に多いのだそうだ。

 「ビジネスで来るお客さんのほとんどは、もう何年も通ってくれている常連さんばかりよ。みんな、うちの宿を第二の我が家だと思ってくれているの」。マヌエラさんは嬉しそうに教えてくれた。

 



FSイタリア鉄道のテルモリ駅(上)。駅周辺に広がる近代的な新市街(下)。

テルモリ市街地の地図。ボルゴは海に突き出た小さな半島になっている



新市街の突き当たりにあるボルゴの入り口。ボルゴ内は車両進入禁止になっている(上)。城壁のアーチをくぐると、新市街の喧騒とは無縁の別世界が広がっている(下)。