差別化の鍵となる個性的な空間作り

  ビジネス・バカンスを問わず、「一年を通じて常連、リピーターのお客さんが多い」と言う二人のオーナーに、「普通のホテルとの違いはどこにあるのか?」と尋ねると、二人は異口同音に「個性的で細部までだわった空間にある」と答えた。インターネットのWiFiや衛星放送TVが全室に備わっているのは今では当たり前の世界。ビジネスであれバカンスであれ、そうした必要最低限の設備が整っていない宿は真っ先に敬遠されるため、通常のホテルの客室にある設備は必ず完備する。その上で、どこか無機質な大型ホテルではありえないような、個性的な空間作りを演出するのだそうだ。客室がある館やアパートはそれぞれ広さも形も、窓からの眺めも異なる。また、どんなに古い建物であれ、その建物の原型となるパーツは極力再利用すると言う。そうすることで部屋ごとに個性が生まれ、画一的なホテルの部屋ではなく、まるで自分の家にいるような居心地の良い空間ができるのだそうだ。

 

 マヌエラさんとファブリッツィオ氏のスタイルは、二人が言う通り全く違う。マヌエラさんのロカンダの部屋は、古い建物にあえてモダンでキッチュな装飾を取り入れた装飾で統一されている。一方、ファブリッツィオ氏のレジデンツァは、歴史の重厚さと爽やかな海のイメージをミックスした装飾をベースにしている。一つ一つ異なる客室を見て回るのはとても楽しく、実際、宿泊客も「この前は3号室だったけど、今度は別の部屋にして」というように客室巡りを楽しんでいるそうだ。

 

「ADを始めるなら、まずは地元の優秀な建築家を探すことが重要だ。その土地の歴史を知っていて、その土地ならではの装飾アイテムや石や木材などの素材、家屋のスタイルを知っている建築家に古い建物の改装を頼むこと。そうすれば、世界のどこを探しても見つけられないその土地だけの客室が出来上がる。そういう個性的な宿のことを忘れる人はいないし、居心地が良かったなら必ず戻ってきてくれる。もし戻ってきてくれなくても、誰かに話してくれるはずだ。話題に上れば、評判は口コミで広がっていく。そうすれば、同じ街へ行っても駅前のビジネスホテルではなく、誰かに話したくなるような個性的な宿に泊まりたいという人が増えていくんだよ」。個性的な部屋づくりがいかに重要であるか、ファブリッツィオ氏が熱く語ってくれた。

(取材・写真・文/田島麻美)

 

Locanda Alfieri/ロカンダ・アルフィエーリの客室の一例。古い建物の壁のレンガはそのまま装飾として残し、モダンな家具やファブリックと融合させているのが特徴。土地の歴史を垣間見せつつ、現代人にも居心地の良い快適空間を作り上げている。

Residenza Sveva/レジデンツァ・スヴェーヴァの客室の一例。こちらも古い建物の壁や天井、家具などを装飾として残しつつ、海の青と重厚感のあるファブリックで統一。ロカンダとは全く異なるスタイルで個性を打ち出している。どちらの宿も全部屋異なるが、全部屋に共通するスタイルを貫くことで「宿の個性」を確立している。