文/光瀬憲子

 

 栄養価が高いのに値段が手ごろで、世界中で愛されている食材、卵。台湾でも日本同様多くの料理に用いられている。今回から2回に分けて台湾の卵料理にフォーカスしてみたい。

やごはんものに添えられる煮玉子。魯肉飯の肉と一緒に煮込まれた濃厚な味付けが魅力

■コンビニにいつもある卵

 台湾の卵と言えば、誰もがまず思い浮かべるのはコンビニの茹で卵ではないだろうか? 多くの日本人が初めて台湾を訪れたとき、コンビニに足を踏み入れた瞬間、「うっ、何このニオイ?」と感じただろう。私も最初はあのニオイに馴染めなかった。コンビニの電鍋(日本でも認知度が上がった台湾式炊飯器)に入った茶葉卵である。

台湾のコンビニを漢方の匂いで満たす茶葉卵(写真左上)

 あらかじめ固茹でにした卵の殻にヒビを入れて、烏龍茶や紅茶、五香粉や滷味包(煮込み用の味付け袋)と一緒に煮込んだもので、台湾のコンビニに独特の香りを漂わせている。かつては自宅で作る人も多く、子どもたちが「卵の殻にヒビを入れる役」をさせてもらったという。スプーンなどでカンカンと卵にヒビを入れていく子供たちの楽し気な表情が想像できる。

 不思議なもので、台湾に数日滞在して台湾の食べ物を食べていると、徐々にあの香りが心地よくなってくる。そういえば映画『千と千尋の神隠し』で、千尋は異世界に生きる者から「人間臭い」と言われるが、ハクという青年が「ここの物を三日も食べれば匂いは消える」と言う場面があった。

 台湾に数日いるとその独特の匂いに慣れてくるのは、自分も土地の物を食べて体内に取り入れることで、「日本臭さ」が抜けて、台湾に馴染んでいくからなのかもしれない。