文・写真/室橋裕和

 

 北海道のおみやげといえば、かの銘菓「白い恋人」をはじめとした数々のスイーツ、地場の海鮮に農産物と、上げればキリがないほど豊富なのだが、僕としてはやっぱりこう「国境感」のあるブツが欲しい。

 そんなことを考えながら道東の各地を旅していたのだが、納沙布岬で格好のものに出会ったのだ。歯舞群島を眺めながら強烈な寒風に吹かれ、辺境の風情を満喫していたときのことである。

 土産物屋の一軒で、「貝殻島産のコンブ」なるものを見つけた。貝殻島といえば、この納沙布岬からわずか3.7キロ。歯舞群島の中でも北海道に最も近い「北方領土」だ。島自体はとても小さいもので、満潮時にはほとんど波に覆われてしまうが、その上に建っている灯台が納沙布岬からもよく見える。灯台は日本が統治していた時代につくられたもので、現在ロシアは整備をしていないのか、機能していないらしい。

 そんな貝殻島で採れたコンブとは、どんなものなのだろうか。そもそも、ロシア支配下にある貝殻島で日本が漁をしてもいいのだろうか。あるいはロシア側が獲ったものを、日本に輸出してきているのだろうか……。

「ありゃあ、ロシアに金を払って、“獲らせてもらってる”んだよ」

 苦々しい顔で教えてくれたのは地元の漁業関連の方だった。

「一隻あたり、50万円かそこらじゃねえかな。その採取料金をロシアに払って、コンブを獲ってんだ」

本当においしい貝殻島コンブ。ネットなど通販でも買える
納沙布岬にて。歯舞群島がすぐそばに迫る