滋賀県の琵琶湖の北に小さな湖があるのをご存知でしょうか。余呉湖と呼ばれ、湖面が鏡のように美しく映える湖です。この湖岸に「徳山鮓」があります。

 ここへ名物の熊鍋を初めて食べに出かけたのは6年ほど前で、この「TABILISTA」の連載でも、第4回目に登場しています。発酵学者で知られる小泉武夫さんが「徳山鮓」を世に知らしめました。かつて「徳山鮓」の対面の湖岸に「発酵研究所」があり、そこへたびたび出かけていらした所長の小泉さんが、琵琶湖名物「鮒ずし」を探し求めている中で見つけた店でしたが、店に通ううちに「鮒ずし」ばかりか、冬の熊鍋の飛び切りの美味しさに感動し、広く喧伝したとのことです。

 

「徳山鮓」冬景色の玄関

 

 すでに何回通ったかわかりません。冬になると、友達を誘いたくなり、今では出かけると次の冬の予約をするようになりました。それほど、好きな店です。

 理由は簡単、日本でいただく肉の中では、ここのツキノワグマのロース肉が、一番自然で、しかもノーブルな香りと味わいだからです。ここで熊肉をいただくと、牛肉がいかに人工的な肉であるかを思い知らされます。

 しゃぶしゃぶでいただくのですが、スライスされた熊のロース肉が運ばれてくると、初めて召し上がられる方は、一瞬のけぞります。半分以上が脂身なので、圧倒されるのですね。「私、一切れで十分です」とおっしゃりながら、一ついただくと「美味しい!」と声を挙げ、お替り、お替りとなります。しゃぶしゃぶの鍋の出汁に秘密があり、先日こっそり伺うと、発酵出汁を加えているとのことでした。

 

「徳山鮓」熊鍋