文/チョン・ウンスク

 

赤と白の灯台が見つめ合うように立つ安仁海辺

♪昨夜見た夢は朝になったら忘れるけれど
 一匹の美しい鯨の夢は僕の脳裏に焼き付いて離れない
 さあ行こう東の海へ 神宿る鯨を獲りに

 ――映画『バカたちの行進』(1975)のテーマ曲「コレサニャン(鯨とり)」の一節

 抑圧からの解放を渇望する思いが込められた歌「コレサニャン」。私より上の世代にとっては、この十年後の映画『鯨とり』(1984)や、さらに十年後のドラマ『砂時計』(1995)の記憶も重なり、東海岸は思い入れのある地である。

 しかし、東海岸の中心都市・江陵で冬季五輪が開かれたり、カフェの街としてメジャー観光地になったりした今では、この歌を思い出す人は少なくなったかもしれない。

■正東津

安仁海辺。かつて民主化運動に関わった者にとって東海岸の解放感は格別だ

 江陵から海沿いの国道7号線をバスで南下する。赤い灯台と白い灯台がある小さな浦口が安仁海辺(アニンヘビョン)だ。

 民家と民宿が入り混じった村をさらに南へ歩く。

 ドラマ『砂時計』の撮影地・正東津と映画『四月の雪』の撮影地・三陟を結ぶ観光列車が海沿いを走っている。この静かな海辺の村のBGMは波の音と汽笛だけだ。

 1980年の光州民主化運動の実映像を使ったことで大きな話題となったドラマ『砂時計』は、1995年放送当時、「帰宅時計」と呼ばれるほどの人気番組だった。民主化デモに参加し、警察の追跡を避けて海辺の小さな村に潜伏していたヘリン(コ·ヒョンジョン)が警察に捕まったのが正東津駅だ。撮影地が観光名所になる先駆け的存在である。

 ドラマから27年。この辺りもすっかり変わってしまった。山の上にはクルーズ船を模したサンクルーズリゾートができ、海辺には砂時計公園や汽車博物館ができ、かつての線路はレールパイクになった。大小の看板を掲げた刺身屋は客の呼び込みに忙しい。正東津駅舎も新しくなっている。『砂時計』の名前は知っていても、若者の多くはドラマを観ていないだろう。

1995年の大ヒットドラマ『砂時計』の撮影地、正東津。 正東津砂時計公園には、大型砂時計、汽車模型、列車を利用した博物館など、さまざまな見どころがある
巨大な遊覧船を模して造られた正東津サンクルーズリゾート