文と写真・田島麻美

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アドリア海の小さな漁村テルモリはトレミティ諸島へ渡るフェリーの発着地でもある

アドリア海きっての景勝地・ガルガーノ半島のすぐ上にある小さな港町テルモリ。イタリアでもあまり知られていないが、トレミティ諸島へ渡るフェリーの発着地でもあるこの街は、海を愛する人たちにとっては「誰にも教えたくない隠れ家」的なバカンス地だという。4月下旬から9月までの夏のバカンスシーズンには、イタリア及び欧州各地から押し寄せる常連のバカンス客でごった返すらしいが、早春のこの時期はまだいたって静かでのんびりしている。アドリア海の小さな漁村の日常を体験しに、ローマから足を伸ばして2泊3日の旅に出た。

 

モダンな新市街と中世時代の集落のコントラスト

 ローマから特急と各駅電車を乗り継ぎ、約5時間かけてようやくテルモリにたどり着いた。鉄道の駅前には近代的な商店街と住宅街が広がっていて、漁村の風景はどこにも見えない。モダンなショーウインドウが並ぶ舗装道を3分ほど歩くと、広場の左手にようやく海が見えてきた。真っ青な水平線に誘われるように緩やかな坂道を下って海の方へ足を進めると、突き当りの道路の先に中世時代の城塞がそびえているのが見えた。ここが”ボルゴ”と呼ばれる古い集落の入り口だ。

 実は今回のテルモリ訪問にはもう一つの目的があった。最近日本でも知られるようになってきた「アルベルゴ・ディフーゾ(AD)」という分散型ホテルを体験するというもので、何でもこのテルモリの集落は、ADの登場によって深刻な過疎から見事に復活したのだそうだ。宿があるボルゴは、近代的な新市街と一つの道路を挟んで向かい合っている。城壁の中に一歩入れば中世時代からの古い建物が残る小さな集落、城壁を出ればショッピング・ストリートが並ぶモダンな住宅街。徒歩3分もかからない距離に、現代と中世の街並みが向かい合って存在している。過去と現在を一瞬で行き来しているような強烈な風景のコントラストがとても面白い。

 

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広い舗装道の両脇に、ショッピング・ストリートが広がる新市街(上)。道路を一本隔て、海に突き出すようにレンガの城壁に囲まれたボルゴがある。城壁の門の先には、中世以前からの小さな漁村の家並みが残されている(中上)。古くから漁師たちの住まいがあった集落は、20年程前には深刻な過疎化が進んでいたという。現在では、昔の面影を残して美しく修復された館が並んでいる(中下)。ボルゴの中心にあるサンタ・マリア・プリフィカツィオーネ大聖堂。12〜13世紀に建てられたロマネスク様式だが、起源はさらに古く、元はギリシャ神話に登場するカストルとポルックスに捧げられた神殿があったという(下)