ハンガリーから先は「外国」

 首都リュブリャナを通過し、スロヴェニア国内を軽快に横断してきた我々だったが、ハンガリー国境が近づいてきたところでルーマニア人夫妻がちょっと緊張した様子を見せた。同じEU加盟国ではあるが、ハンガリー、ルーマニアはまだユーロではなく独自の通貨を使っていて、国境でも検問・税関・パスポートコントロールがあるという。毎日膨大な数の大型トラックが行き来するハンガリー国境では、不法移民や密輸品などに対し厳格に目を光らせているのだそうだ。

 ハンガリー国境の検問所には、長い列ができていた。両脇には大型のトラックが並び、車体に書かれた文字を見るだけではどの国のものなのか私には判別できない。我々の前後にもドイツ、スイス、オーストリアなど様々な国のナンバープレートをつけた乗用車が並び、ここが東ヨーロッパの大交差点であることを実感させられる。しばらくして我々の番がやってきた。ルーマニア人夫妻はIDカードを提示、イタリア人の相棒と日本人の私はそれぞれパスポートを提示した。私以外の3人はEU諸国の出身なのであっさり確認が済んだが、日本人の私のパスポートはじっくりチェックされた。それもそうだろう。日が暮れて暗くなってきたこの時間帯に、ルーマニア人とイタリア人3人と一緒に車でハンガリー国境を越えようとする日本人が一体何人いるだろうか? 不審に思われても仕方がない。新型コロナの影響もあるかと思ったが、東欧のど真ん中ではまだ騒ぎは起こっておらず、入国スタンプを押すと特に質問もされないまま通してくれた。

 ハンガリーでも給油&カフェ休憩でドライブインに立ち寄ることを楽しみにしていた私だが、この意見は却下された。夫妻に理由を尋ねると、「通貨が違うからいちいち換金するのが面倒くさい。それにハンガリーの通貨基準がわからないから、カフェ一杯がいくらで、それが高いのか安いのかもわからない。万が一ぼったくられたとしても気がつかないから避けている」と言われた。なるほど。隣り合った国、しかも同じEU加盟国でありながら、スロヴェニアとハンガリーでは確かに大きな違いがある。道路標識の言葉も読めないし、カーラジオから流れてくる言葉も全く理解できない。ハンガリー国内に入ってから徐々に「ああ、ここは見知らぬ外国なんだ」という感覚が強くなってきている。ルーマニア国境まで約4時間で通過できるのだから、その間はカフェも我慢して一気に走り抜けることにした。







スロヴェニアの高速道路からオーストリアのアルプスの雪山を望む(上)。東欧の大交差点であるハンガリー国境の検問所(中上)。帰路にトイレ休憩で立ち寄ったハンガリーのガソリンスタンド。KFCが併設されていて驚いた(中下)。ハンガリーのドライブインの軽食メニューはドイツ風のものが多い。通貨はFt(フォリント)で1フォリントは0.0030ユーロ(2020年2月現在)。