素朴なルーマニア農家の日曜日

  ローマから1800kmを完走し、ルーマニアのほぼ中央に位置するトゥルナヴェニに着いたのは翌日の午前3時半。後部座席で時々寝落ちしながら座っていただけの私と相棒がこれだけ疲れたのだから、ハンドルを握っていた夫妻の疲労は相当なものだろう。彼らのファミリーが所有するアパートに到着後、荷物を放り出してすぐにベッドに倒れ込んだ。

 目が覚めてようやく頭がシャッキリした頃、携帯が鳴った。ルーマニア人夫妻のご両親が暮らす農家で日曜の朝のひとときを一緒に過ごすことになり、迎えの車に乗り込んで郊外へと移動した。暖かな日差しに照らされた車窓には、どこまでも果てしなく続く大地が広がっている。

 



街から車で10分も走ると、右も左も見渡す限り広大な畑の風景が広がっている。主にとうもろこしや小麦、葡萄などを栽培しているのだそうだ(上)。葡萄棚があるおじいちゃんの家の庭先。近隣には家族や親戚の家が集まっている(下)

 トラクターが通ったばかりだという泥だらけの道を歩き、おじいちゃん、おばあちゃんが待つ家に着くと、リビングには早くも兄弟や孫、いとこ達が集まっていた。日曜日はいつもこうして、近所に住む家族や親類がおじいちゃん、おばあちゃんの家に立ち寄って行くのだそうだ。家の裏にある畑や果樹園、鶏の世話を一人で手掛けているというおじいちゃんは、挨拶もそこそこに自慢の手作りワインを差し出した。一方、おばあちゃんは、おじいちゃんが収穫したとうもろこしや野菜、果物を使った手作りの素朴な郷土料理やお菓子を勧めてくる。初対面なのに、会った途端にワインと料理を目の前に差し出された私と相棒は一瞬戸惑ったのだが、それを見ていた家族の一人で、イタリアで働いていた経験を持つ男性がこんなことを教えてくれた。

 「気にしないでどんどん食べろ。別に君たちのために特別に作ったわけじゃない。ここでは誰でも好きな時に来て、好きなものを好きなだけ食べて、好きな時に帰っていくのが当たり前なんだ。それがここの日曜日の過ごし方なんだよ」

 家族であれご近所であれ、果ては私達のような突然の訪問者であれ、家に来た人は誰でも手作りの料理とワインで歓迎するのがルーマニアの農家のおもてなしであるらしい。実際私たちがいた間にも、息子達や孫達が入れ替わり立ち替わり挨拶に立ち寄っては一皿食べ、ワインを飲み、気がつけばいつの間にか立ち去っていた。飾らない自然体の家族のつながりがそこに見える。賑やかな大家族の笑い声に包まれながら、おじいちゃん、おばあちゃんの愛情がたっぷりこもった味の数々を楽しみつつ、日曜日の朝は過ぎていった。(次回へ続く)

 



トマトソースやワインなど家で消費する食材は全て自分で作っている、と胸を張るおじいちゃん(右)が自慢の工房を見せてくれた(上)。家の裏手に広がる畑と果樹園。ニンニクやトマト、葡萄、りんご、とうもろこしなど、自給自足ができるほどの野菜や果物を栽培している(下)





おばあちゃんが数十年前から愛用しているコンロは今もバリバリ現役(上)。リビングに響き渡る陽気なルーマニアの民族音楽をBGMに家族の団欒は続く(中)。そうめんのような食感の細い手打ちパスタを入れたチキンスープはおばあちゃん自慢の手料理(下)