もう一度食べたい! 絶品トランシルヴァニアの味10選

 地理的にはイタリアに近い距離にありながら、ルーマニア料理については何も知らなかった私だが、トランシルヴァニア地方に滞在した1週間はとにかく美味しいものを食べまくっていた記憶が残っている。現地の人たちに教えてもらった話によると、ルーマニアでは小麦や大麦、ぶどう、とうもろこし、ひまわりの種などの生産が盛んで、良質な材料から作られるビール、ウォッカ、ワインと言ったアルコール類は世界的に見ても質が高く価格が安い。伝統料理も農業大国ならではの有機栽培の自然食材をふんだんに使用し、オスマン帝国時代から残るトルコ料理、また近隣のハンガリー料理、セルビア料理、オーストリア料理の影響を受けたバラエティ豊かなメニューがずらりと並ぶ。主食は小麦ととうもろこしで、特にとうもろこしの粉を煮て牛乳とバターを混ぜた「ママリガ(Mamaliga)」は食卓には欠かせない。メインとなる肉や魚も新鮮でとても美味しく、しかも驚くほど安い。一例を挙げると、ちょっと高級なレストランでビールとデザートを含めお腹いっぱい食べても1500円前後で済む。
 トランシルヴァニア地方は内陸のため肉料理が中心で、豚や牛、羊、鶏肉などをパプリカやジャガイモなどと一緒に煮込んだり、グリルしたものが伝統料理となっている。野菜も豊富で特にパプリカ、玉ねぎは隠し味としても良く使われている。テーブル習慣で興味深かったのは、ルーマニアではレストランでも「ワンプレート」でサーヴされること。例えば、肉料理を頼むと大きな皿に主食のママリガと肉料理、付け合わせの野菜が一緒に載っているものが出されるので、注文が一度で済むのは嬉しいシステムだ。馴染みがなかったルーマニア料理だが、一度食べたら忘れられない味のオンパレードで、写真を見返すたびに恋しくなっている。今回は肉料理からデザート、屋台の味まで、トランシルヴァニアの忘れられない味を厳選してご紹介しよう。

 

1・サルマーレ(Sarmale)

       

 ルーマニア全土で愛されている家庭料理の代表「サルマーレ」。ひき肉と玉ねぎ、米の具を酢漬けキャベツで包んで煮込んだルーマニア風ロールキャベツは、酸味が効いたさっぱりした味わい。ルーマニアでは特別な行事や家族の集まりには決まってサルマーレを作るそうで、材料や味付けは地方や家庭によって様々なバリエーションがあるのだとか。いわばルーマニア人の「お袋の味」がこのサルマーレで、女の子がいる家では“我が家のサルマーレ”が上手に作れるようになるまではお嫁に行けない、と言われるのだとか。お世話になったルーマニア人家族のマンマが作ってくれたサルマーレは、豚挽肉と玉ねぎ、米の具を包んだものをサワークリームで煮込んだシンプルなもの。温かくても冷たくても美味しい。サワークリームが豚肉のしつこさを消し、とてもさっぱりしているので幾つでも食べられる。

 

2・ミティティ(Mititei)

 サルマーレと並んでルーマニア料理の代表と言われる「ミティティ」。地元の人たちは省略して「ミチ」と呼んでいる。つくねのルーマニア版のような肉料理で、トルコやバルカン半島でも良く食べられているメニューだ。豚肉が使われることが多いが、これも地方や家庭によっては牛肉、羊肉などを使う場合もあるそうだ。挽肉の中に香辛料をたっぷり入れて棒状にし、香ばしくグリルしたミチはビールとの相性も抜群。ちなみにルーマニアのビールは水と同じくらいの値段でとても安くて美味しい。ミチはスーパーでもこの形状のものが売られているくらいスタンダードな料理で、レストランでも屋台でも家庭でも、ルーマニアならどこでも食べられるはずだ。様々なスパイスが噛めば噛むほど味わいを深めてくれるミチの美味しさは病みつきになるはず。ヨーグルトやサワークリームもついてくるが、そのまま食べても十分深い味わいが楽しめる。

 

3・チョルバ・デ・ブルタ(Ciorba de Burta)

 ルーマニア語で煮込みのことを「チョルバ」と言うのだが、レストランなどのメニューでは、チョルバ=スープとなっている。トマトスープや野菜スープ、チキンスープなど、豊富なメニューが揃うスープ類は前菜がわりという位置づけで食されている。ルーマニア人が大好きなこのチョルバ・デ・ブルタは牛のモツをサワークリームで煮込んだもので、私は勝手に「ルーマニア風トリッパ・スープ」と名付けた。モツは柔らかくて臭みがなく、とても美味しい。ローマのトリッパや日本のモツ煮込みを食べ慣れた舌にはほんのり甘くて酸味があるサワークリームとモツの組み合わせが衝撃的だが、口当たりがさっぱりしていると同時に繊細な甘味、酸味、コクとモツの歯応えが楽しめるというバラエティ豊かな一品だ。食事の最初にさっぱりしたモツ煮込みを食べるという習慣も面白かった。