公私を問わず高速鉄道を利用する機会が多い私の元へ、先日、「italo(イタロ=イタリアの私鉄高速列車)」からチケット割引のお知らせが届いた。どこへも行く予定などなかったのだが、せっかくの割引チケットを無駄にするのももったいたい。かといって、綿密なプランを立てて準備をするのも億劫だ。気軽にふらっと出かけて気分転換できるような街はないだろうか。地図を見ていた時、Piacenza/ピアチェンツァという地名が目に飛び込んできた。エミリア・ロマーニャ州の都市はどこも綺麗に整備されていて、人も穏やかでのんびりしている。その上、プロシュットやパルミジャーノ・チーズなど美食の宝庫でもある。このエリアならプラン・ゼロでふらっと行っても楽しめるかもしれない。春の心地よいそよ風に誘われて、名前を知ったばかりの街へ向かった。

 

中世時代の栄華が息づく旧市街

 FSピアチェンツァ駅に着いて真っ先に目指したのはツーリスト・インフォメーションのオフィス。なにしろ地図上で見た「Piacenza」という名前に惹かれて来ただけなので、ここがどういう街で、何があるのか、全くわからない。駅から旧市街の方向へ歩くこと10分足らず、どうやら街の中心らしき広場に出た。中世時代に建設された大聖堂の中庭でツーリスト・オフィスを探して迷っていると、タバコ屋のおじさんが「インフォメーション・オフィスはカヴァッリ広場だよ」と言って、親切に道順まで教えてくれた。平日の午前中、軽やかに自転車を走らせるお年寄りやウィンドー・ショッピングを楽しんでいる赤ちゃん連れのママ達と一緒に、春の温かい陽光を浴びながら大通りを歩き、目的のカヴァッリ広場に到着した。

 

 広場でまず目を惹いたのは赤いレンガと大理石で造られた壮大なゴシック様式の宮殿。この一角にツーリスト・オフィスがある。オフィスで街の地図をもらいがてら見所などの情報を尋ねると、案内のシニョーラが、「旧市街には中世時代の教会や宮殿がたくさんありますよ。でも一つだけ気をつけて。ピアチェンツァの街は、12時から15時まではお昼の休憩で教会も美術館も全て閉まってしまうから」と言った。時計を見ると、すでに11時に近い。慌ててお礼を言うと、早速町歩きに戻った。インフォメーション・オフィスでもらった資料を読むと、この街の歴史はとても古く、古代ローマの執政官によって紀元前218年に築かれたことがわかった。その後、中世時代に商業や金融業の中心として栄え、当時は欧州全体にその名が知れ渡るほどの繁栄ぶりだったそうだ。さらに、イギリスのカンタベリー大聖堂とローマを結ぶ巡礼路・フランチージェナ街道の中心地でもあったピアチェンツァは、欧州各地から様々な人々が行き交う中世時代のコスモポリタンな街だった。なるほど、旧市街を歩いていると、この街の栄華が偲ばれる赤いレンガ造りの壮大な教会や華麗な建築物があちこちに残っている。

 







12〜13世紀にかけて建築された被昇天聖母マリアに献げられた大聖堂があるドゥオーモ広場(上)。ジャズフェスティバルが開かれていた旧市街では、あちこちからライブ演奏が聞こえて来た(中上)。かつての繁栄ぶりを思わせる華麗な住宅(中下)。インフォメーション・オフィスがあるカヴァッリ広場には特徴的なゴシック様式の建物「ゴシック宮殿」やバロック彫刻の傑作「ファルネーゼの騎馬像」、「総督宮殿」などが集まっている(下)