喧騒まみれの日常に疲れると、穏やかな自然の中に身をおきたくなる。ローマ市内にも森林浴ができる公園はいくつもあるのだが、思い切りリフレッシュするにはやはり街から脱出する方がいい。思い立ったら、いてもたってもいられなくなった。ローマ近郊で車がなくても簡単にアクセスでき、自然散策と街歩きが楽しめて、できれば文化遺産にも触れられる。そんなわがままを叶えてくれる場所はあるだろうか?
検索するうち、湖畔の街・ブラッチャーノに行き着いた。ローマから各駅電車で約1時間、街の中心には保存状態の良さで知られる15世紀の城もある。気分転換に、フラッと気楽な日帰り旅に出かけた。

 

ラツィオ州で最も保存状態が良い15世紀の城

 ローマのFSオスティエンセ駅からブラッチャーノまでの電車賃は3ユーロ。臨時出費の心配もなく、ちょっとそこまで散歩に行く感覚で電車に乗った。ブラッチャーノの駅から人波について歩き始めて3分もしないうち、街の目ぬき通りであるプリンチペ・ディ・ナポリ通りに出た。旧市街の高台を見上げると、堂々たる風貌の城が目に飛び込んできた。

 ブラッチャーノ城の正式名称は「オルシーニ・オデスカルキ城」。周囲を三重の壁で囲み、5つの塔を配した堅固な城塞は、名門貴族オルシーニ家が15世紀から所有していた建物。その後17世紀末にオデスカルキ家へと渡り、現在もオデスカルキ家の城主がここで暮らしている。現役の貴族の邸宅ではあるが、城の一部は有料で一般公開されているだけでなく、映画の撮影や結婚式場としても貸し出されている。過去にはタイロン・パワー、マーティン・スコセッシ、トム・クルーズなどの有名人もここで結婚式を挙げた人気の式場だ。

 入り口で8,50ユーロを払ってチケットと城内マップをもらい、見学ルートをチェック。マップには寝室や武器庫、大広間や城壁沿いの展望テラスなど22のポイントが記されていて、「これでもほんの一部に過ぎないのか?」と、城の大きさを改めて実感。内部に入ると、各部屋を装飾する15世紀の画家アントニアッツォ・ロマーノの素晴らしい天井画に目を奪われる。数百年の時を経ているにも関わらず、鮮やかな色彩と緻密なデザインに首の痛みも忘れて見とれてしまった。コースには、ローマ法王が滞在していた部屋やイタリア国王ウンベルト一世が泊まった寝室、中世騎士の武器や鎧などを展示した部屋、城内の食事を作っていた台所など見どころが満載。最後に城壁沿いのテラスからブラッチャーノ湖の美しいパノラマを堪能し、優雅で贅沢な貴族ライフの疑似体験を楽しんだ。

 



エントランスを通って塔の下にある入り口へ。テラスからは湖のパノラマも楽しめる(上)。1478〜1481年にかけて、歴史的事件である「パッツィ家の陰謀」と蔓延するペストから避難してきたローマ法王シスト4世が滞在していた部屋(下)。


公開されている中では一番広い「チェーザリの間」。古代ローマの12の胸像の他、アントニアッツォ・ロマーノのフレスコ画が見られる(上)。とても保存状態が良い16世紀のヴェネツィア様式のベッドと天井装飾が見事な「イザベッラの間」は、16世紀の城主パオロ・ジョルダーノ・オルシーニの奥方の寝室(下)。