パルマ:グルメの聖地で心と体に栄養補給

東西南北各地に〝美味いもん〟が溢れているイタリアでは、「わが故郷こそ美食の宝庫」と自慢するイタリア人が後を絶たないが、そんな彼らでさえ「パルマ=美食の都」と聞いて異議を唱える人はいないだろう。有名な生ハム「プロシュット・ディ・パルマ」に始まり、チーズの「パルミジャーノ・レッジャーノ」、バルサミコ酢、具を詰めて包んだパスタ「トルテッリ」などなど、イタリア全土の家庭に普及している食材や定番料理の多くが、パルマの街とその周辺の地域で産まれたのだから。エミリア・ロマーニャ州のパルマは今も昔も食品産業が盛んで、小さな街にも関わらず、EUの欧州食品安全機構の本部が置かれている。その上、2015年には「美食創作都市」としてユネスコ世界遺産にも登録されたというから、その実力と本気度は推して知るべしである。
パルマの街歩きの楽しみは当然ながら「食べ歩き」だが、それだけでは語り尽くせない魅力がこの街にはたくさんある。北イタリアの「美食の都」で出会える芸術とグルメをご紹介しよう。

 

中世芸術が散りばめられた旧市街

 中世時代に自治都市として栄えたパルマの街の起源は古く、青銅器時代にまで遡る。円形の盾を意味する「パルマ」という街の名前も古代エトルリア人によって名付けられたそうで、北イタリアの平野部のほぼ中央に位置するこの街は、古代から様々な街道の交差点として重要な位置を占めていたことがうかがえる。その後、イタリアが一国家として統一されるまではパルマ公国の首都であった旧市街は、13世紀の典型的な自治都市の姿をほぼ完全な形で残していると言われているが、なるほど街を歩くと当時の栄華を偲ばせる建物や芸術品が随所に見つかる。中でも旧市街の中心にあるドゥオーモ(大聖堂)と洗礼堂は当時のこの街の栄光を今に伝える貴重な建築物で、彫刻家で建築家でもあったベネデット・アンテラーミによって12世紀に完成した。

 ドゥオーモの中に足を踏み入れるや否や、柱から天井までびっしりと隙間なく埋め尽くされたフレスコ画に息を飲む。そこには、簡素なファサードとは正反対の極彩色の世界が広がっていた。クーポラに描かれた天井画は、ルネサンスを代表する画家・コレッジョの『聖母被昇天』。16世紀フレスコ画の傑作と言われるこの天井画を始め、同時代に活躍した画家達によって描かれた聖書の世界をテーマとした荘厳なフレスコ画に見惚れながら、しばし別世界にいる気分を味わう。

 大聖堂の隣にあるピンクの大理石でできた華麗な洗礼堂もまた、内部には素晴らしい芸術が残されていた。16本のヴェローナ産の大理石によって傘の骨のように分割されたクーポラに描かれた13〜14世紀のフレスコ画は、地元エミリア州の画家達によって奉納された作品であるという。さらに、洗礼堂内下部と外観を装飾する彫刻群はロマネスク様式からゴシック様式へのちょうど移行期に制作された作品で、イタリア美術史においても貴重な芸術遺産となっているのだそうだ。

 



パルマ大聖堂の名で知られるドゥオーモの正式名称は「サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂」。12世紀ロマネスク様式の代表的な建築として名高い(上)。内部は後世16世紀以降にコレッジョなど当時の有名画家達によって描かれたフレスコ画で埋め尽くされている。質素な外観と豪華な内観のコントラストに驚かされる(下)。




ドゥオーモに隣接する洗礼堂も12〜13世紀に建築家アンテラーミによって建てられた(上)。洗礼堂内は独特の傘のような巨大なクーポラと彫刻群で装飾されている(中)。ロマネスクからゴシックへ、様式の過渡期に制作された彫刻群も見逃せない(下)