聖地の実力を思い知る絶品トラットリア

 美食の都パルマには「絶品レストラン」が山ほどあるのだろうが、如何せん、私の胃袋と滞在期間は限られている。どこに入っても失敗は少ないような気はしたが、パルマに来たからにはやはり、「感動的なディナー」を味わって帰りたい。ホテルのレセプションでそう口にした私に、パルマ人のお兄ちゃんが、「とっておきの店を教えるよ。大丈夫、ここなら絶対に外さないから」と言って、彼が贔屓にしているトラットリアを予約してくれた。

 「ショッピング・ストリートのファリーニ通りをまっすぐ歩いて行くと右手に石のアーチが見えるから、それをくぐって行けば店に着くよ」とお兄ちゃんが教えてくれたとおり、大通りを一本入った小さな路地に『トラットリア・デル・トゥリブナーレ』はあった。小さなドアを開けて店内に入った途端、得も言われぬ芳香が鼻腔に満ちてくる。壁一面には丸ごとプロシュットがずらりとかけられ、テーブルには大きなパルミジャーノ・レッジャーノの塊が鎮座している。この光景を見ただけで、早くも笑みが広がってきた。ああ、なんていい香り。

 メニューを見て悩みに悩んだ末、この夜はプロシュットとズッキーニ、サフランの手打ちパスタ・タリアテッレと豚の頬肉グアンチャーレのバルサミコ酢風味に決めた。店のパスタは全て自家製ということだったが、運ばれてきた皿を見てその美しさに思わずうっとりしてしまった。卵入りの黄色い手打ちのタリアテッレがサフランのソースでツヤツヤと黄金色に輝いている。極上のパルミジャーノ・チーズを好きなだけかけて、早速口に運んだ。これはもう、言葉を失うほど美味い。

 この店の実力はこの一皿で十分わかった。言うまでもなく、メインディッシュのグアンチャーレのバルサミコ酢煮込みもほっぺたが落ちそうだった。あまりに感動したので、翌日の夜も再度ここに足を運び、パルミジャーノ・チーズだけを使ったリゾットと伝統料理のトルテッリも食した。どれもこれも、余分な食材を一切加えていない「シンプル・イズ・ベスト」の絶品料理で、それができるのは、やはりパルマがプロシュット、パルミジャーノ、バルサミコ酢など極上の食材の産地であるからに他ならない。パルマ人のお兄ちゃんが「絶対外さない」と太鼓判を押してくれたトラットリアで美食の聖地の実力を思い知り、その美味しさと奥深さに唸りまくった夜だった。

 





パルマの歴史地区の一角にひっそりと佇む名店『Trattoria del Tribunale』。パルマの伝統料理の数々がとても手頃な値段で味わえる(上)。ドアを開けるや否や、プロシュットとパルミジャーノの芳醇な香りに満たされる(中)。オーダーを受けてから一枚一枚丁寧に切り分けてくれるプロシュット&サラミはどれも絶品(下)。






二日間通って味わったパルマの絶品料理の数々。どれもシンプルかつ脳裏に焼きつく美味しさだった。上から、プロシュット・クルードとズッキーニ、サフランのタリアテッレ、グアンチャーレのバルサミコ酢煮込みポテトピューレ添え、ハーブ入りトルテッリ、パルミジャーノ・チーズのリゾット。