日本からやってきた友達一行とローマを歩き、見慣れない街を歩く楽しさを満喫している彼女らを横目で見るうち、私の中に「旅に出たい!」という欲求がムラムラと湧き上がってきた。行く先はどこでもいい。まだ見たことのない風景、感じたことのない街の雰囲気を私も味わいたい。そう思ったら居ても立ってもいられなくなってきた。一泊二日で行ける近場で、目新しい環境が整った街はどこかにあるだろうか…。思案していると、相棒が週末に所用でペーザロへ行くと言う。ペーザロ? そういえばまだ行ったことがない。地図を見るとアドリア海に面している。5月晴れの爽やかな週末、なかなか見られないアドリア海の海辺で過ごすのは気持ちがいいだろう。即座に心は決まった。

 

遠路はるばるたどり着いた海辺の街

 ローマからペーザロまでは、急行インターシティと各駅の電車を乗り継いで行くしか手段がなく、所用時間は5時間近くかかる。バールもない寂れた乗り換え駅のファルコナーラ・マリッティマで各駅停車を待つこと50分。そこから各駅電車に揺られ、ようやくペーザロに到着した。

 駅前の広場から旧市街を目指して歩き始めると、歩道のあちこちに自転車マークがあることに気づいた。周りを見ると、老若男女誰もが自転車に乗って通り過ぎて行く。バイクシェアリングが進んでいる街らしい。海辺の遊歩道を自転車で走るのはさぞ爽快だろうと想像はするものの、私は自転車に乗れない。馬なら乗れるのだが、自転車だとどうしても直進できず、道路脇を走るのは危険極まりないので周囲から禁止されているのだ。

 



ペーザロの旧市街にある自転車専用道路とバイクシェアリングのパーキング。駅前から市街、海辺の長い遊歩道沿いまで専用路がある。

 自転車専用道路を脇目に旧市街を目指して歩いていると、にわかに雨が降り出した。ウンブリアの山を越え、早起きして遠路はるばるアドリア海を見にここまで来たのに、雨ではどうにもならない。通り雨であってくれることを祈りながら、まずはゆっくりランチをとることにした。

 ペーザロについて全くの無知であった私は、地元民のウェイターに「どんな料理を食べるの?」と尋ねてみた。すると「ストロッツァ・プレティっていうパスタとか、あとはマルケ名物の”フォッサ”っていうチーズをよく食べるよ」ということだったので、この二つのパスタを注文。ペコリーノチーズを熟成させたフォッサは香り高く濃厚な味で卵入り手打ちパスタにぴったり。どっしりしたマルケの赤ワインにもよく合いそう。好き嫌いは分かれそうだが、ペコリーノ好きの私には最高のご馳走である。   

 余談だが、その夜ペーザロの郷土料理について調べてみたところ、「ブロデット」という魚介スープや「パッサテッリ」というパスタがあることが判明した。しかし、滞在中に会ったペーザロ市民の口からは、これらの料理名は一度も聞かなかった。なぜだろう?

 



地元のトラットリアで注文した「フォッサ」という名物のチーズをたっぷりかけた手打ちパスタ(上)は、濃厚なペコリーノチーズの香りと塩味が病みつきになる美味しさ。ストロッツァ・プレティというねじったマカロニのようなパスタ(下)も定番メニューらしい。