爽やかな初夏の風が通り過ぎる季節になった。空はどこまでも青く、太陽はまだ全力を出し切っていない。屋外で食事をするのが大好きなイタリア人が、待ち望んでいた季節がやってきたのだ。なんの変哲もない平日の朝、ふと、「太陽の下で冷たい白ワインを飲みながら、お昼ご飯を食べたら素敵だろうな」と思いついた。ローマで白ワインといえば、『法王のワイン』と呼ばれるカステッリ・ロマーニ地方特産のD.O.Cワイン「フラスカーティ」がある。その名の由来となったフラスカーティの街は、ローマから楽々日帰りで行ける距離。そうだ、フラスカーティに行こう! 早速、女友達を誘うと二つ返事でOKしてくれた。各駅電車に乗ってたったの30分、ラツィオ州を代表する白ワインの産地フラスカーティに着いた。
 

 

「フラスケッタ」発祥の地を歩く

 ローマの南東に位置する「コッリ・アルバーニ(アルバーニ丘陵)」は、古来よりローマ人の避暑地として知られてきた。法王の夏の避暑地カステル・ガンドルフォがあるのもこのエリア。フラスカーティは中でも「白ワイン」と「フラスケッタ」によってローマ人に愛され続けている街である。

    電車を降りて駅前広場右手にある大きな階段を上りきると、ローマ広場に出た。キツい上りだけあって、頂上のローマ広場のテラスからの眺望は最高! ローマ市内と周辺の山々の緑が一望できる素晴らしいパノラマである。ああ、気分爽快。ランチがますます楽しみになってきた。

 広場にあるインフォメーション・オフィスで地図をもらい、案内のイメケンのお兄ちゃんにおすすめのフラスケッタはないか聞いてみた。

 「う〜ん、いっぱいあるからねぇ。どこも美味しいよ。でもツーリスト向けじゃないフラスケッタならメルカート広場に行ってみなよ。外にいっぱいテーブルが出てるからすぐにわかるよ」と教えてくれた。

 「フラスケッタ」とは、文字どおりここフラスカーティが発祥のローマ版居酒屋のことである。もともと、街には特産のワインの量り売りの店がたくさんあり、各地から空ボトルを手にワインを買いに来る人たちで賑わっていた。そのうち、客たちは思い思いのつまみを持ち寄り、買ったばかりのワインと一緒に楽しむようになった。ワインの販売店も遠方から買いに来るお客のためにサラミやチーズ、子豚の丸焼きなどを用意するようになり、長い木のテーブルにドカンとつまみを並べて美味しいワインを好きなだけ楽しめる場を提供するようになった。これがフラスケッタの始まりである。

 街を歩いていると、通りのあちこちに「Fraschetta(フラスケッタ)」や「Norcineria(ノルチネリア=豚肉店)」「Prodotti Tipici(特産物販売)」などの看板を出した小さな商店が目につく。さすが食いしん坊のローマ人がこよなく愛する街だけある。

 





旧市街の入り口ローマ広場(上)。ローマ市内からのバスもここに着く。旧市街の中心サン・ピエトロ広場には17世紀のカテドラーレがある(中)。街中にはサラミやポルケッタ、ワインなど特産品を売る店がたくさん(下)