旅の楽しみの一つに、「どんな宿に泊まるか?」というのがある。イタリアには「ホテル」というカテゴリーだけでもあらゆる形態の宿泊施設がそろっているが、その上さらにB&Bやアグリツーリズモ、バカンス用貸しアパート、教会の修道院といったイタリアならではの滞在が楽しめる施設も豊富で、非日常空間を体験できる選択肢は無数にある。中でもとりわけイタリアの歴史の重みを体感できるのが「レジデンツァ・デポカ(Residenza d’Epoca)」と呼ばれるヴィンテージ邸宅を利用した施設。レジデンツァ・デポカ(ディーモラ・ストリカとも呼ばれる)は、イタリアの法律で定められた、人の住居としての観点から歴史的、文化的、人類学的に際立った特長を持つ建築物の総称で、貴族の別荘や城、ホテル、マナーハウスなど様々な建物が認可されている。現在、こうした建築物はホテルや結婚式場、イベント会場などに再利用されている。今回はそんな歴史的建築物での宿泊体験をご紹介しよう。

 

小高い丘の上に立つ中世の都

 ウンブリア州にあるスポレートは、中世時代にこの地域を統治したスポレート公国の都として栄えた街。現在では毎年初夏に開催される音楽、芸術、演劇の世界的イベント「スポレート音楽祭」が開かれる街として知られている。小高い丘の上に立つ旧市街は細く急な石畳の坂道が四方八方に入り組んでいて、細長い通りの両脇には古代ウンブリア時代、その後のエトルリア時代からの面影を残す石造りの建物が壁のようにそびえている。ペルージャやアッシジといった他のウンブリア州の街と同じく、スポレートも迷子になるのが楽しい街だ。

 旧市街を歩いていると、質素な街並みに彩りを添えるこの土地ならではのカラフルで素朴な陶器や織物などの手工芸品の店が目につき、思わずショッピングをしたくなってしまう。歩き疲れて広場へ出れば、まるで映画のセットのような美しい建築を眺めながらカフェやジェラートが楽しめる。この街では人気のテレビドラマの撮影も行われているが、それもなるほどと納得できるほど、小さな路地や石畳の坂道、どこをとっても絵になる。

 





イタリア中部地震で付近の街は甚大な被害を受けたが、スポレートは堅固な建物のおかげでほとんど被害を受けなかったという(上)。ウンブリア州独特のカラフルな手作り陶器。見ているだけでもウキウキしてくる(中)。メルカート広場のカフェで、冷たいカフェ・シェケラートを楽しむ(下)