現代の市街は動く歩道で移動

 思いがけず宿の地下で一千年以上前の街並みを体験した後は、現代のスポレートの名所を訪ねて再び街歩きに出た。アッシジの聖フランチェスコの手書き写本が残るロマネスク様式の華麗なドゥオーモで感嘆し、そこから旧市街の一番高台にある城塞を目指すことにした。暑さが厳しい日中、この坂を登って歩くのはとてもしんどい。ドゥオーモ広場からはるか頭上にある城塞を眺め、どうしようかと迷っていたら、地図の上にエスカレーターとエレベーターのマークがあるのを発見した。もしや、ここもペルージャのように街中にエスカレーターがあるのか?

 希望の光を見た気分で地図のマークがある地点へ行くと、あった、あった! 最新式のエスカレーターで100m以上の標高差を一気に登り、あっという間に城塞へ到着。入り口前の広場から眺めるスポレートの旧市街とウンブリアの豊かな自然の風景は素晴らしい。

 14世紀に建てられた城塞は、正式にはアルボルノツィアーナ城という。かの有名なルクレツィア・ボルジアもかつてこの城に住んでいた。周囲を崖に囲まれた孤高の城は、1800年には監獄となり、20世紀後半まで使用されていたそうだ。

 旧市街のアップダウンに恐れをなしていた私だが、このエスカレーターの存在を知ってからは気分も軽くなった。街の名所は各所に点在しているが、地図を見ると旧市街の主要ポイントは全て3つの長いエスカレーターでアクセスできるようになっている。暑さも寒さも、雨でも雪でも問題なく、快適な旧市街散策が楽しめるなんて最高!

 





ドゥオーモから城塞へ登るルート②のエスカレーター(上)。城塞前の広場からは旧市街と周囲のパノラマが楽しめる(中)。一番低所から城塞まで旧市街の背骨を上り下りするルート③のエスカレーター。内部は地下鉄の駅のよう。冷房も効いていて快適そのもの(下)。

夕焼けのパノラマを眺めつつ、トリュフとワインに舌堤

 非日常体験の最後の締めくくりは、忘れてはならない郷土の美食。スポレート周辺は美味しい赤ワインと黒トリュフの産地だ。これを食べずして帰るわけにはいくまい。

 眺めのいいテラス席に腰掛け、ウンブリアの赤ワイン・モンテファルコを味わいつつ、夕陽に染まっていく街を眺める。グラスが半分空になった頃、いよいよスポレート名物のパスタ「ストレンゴッツィ」が登場。地元の黒トリュフをたっぷり使った芳醇な香りがたまらない。トリュフはローマやミラノといった都会のレストランではかなり高価な食材だが、スポレートのレストランやトラットリアでは驚くほど安くて美味しい。ケチケチせずにたっぷりパスタに絡めたトリュフと赤ワインを交互に口に運びつつ、ここでしか味わえない贅沢な時間と空間をたっぷり楽しんだ。

 



スポレートの伝統的な手打ちパスタ「ストレンゴッツィ」。様々なソースがあるが、やはりここではトリュフをたっぷり絡めて(上)。素敵なテラス席がある家庭的なレストラン「Il Panciolle(イル・パンチョッレ)」。席から眺める旧市街の夕暮れは最高(下)。