オルチャ渓谷のワイナリー*からの帰路(*No.36、 37参照)、道中見つけた小さな村々に立ち寄ってみることにした。トスカーナのポスターや絵葉書などで目にする美しい丘陵地帯の自然と丘の上の中世の村の風景は、このオルチャ渓谷が撮影ポイントとなっている。特に風光明媚なモンタルチーノとキアンチャーノ・テルメの間には、カスティリオーネ・ドルチャ、モンタルチーノ、サン・クイリコ・ドルチャ、ピエンツァ、ラディコファーニ、バーニョ・ヴィニョーニ、モンテプルチャーノといった中世の村が点在しており、ドライヴの息抜きに訪れてみるもの楽しい。丘の上の城壁の中には、どんな暮らしが息づいているのか? モンタルチーノとサン・クイリコ・ドルチャの村歩きをご紹介しよう。

 

30分で一周できる小さな旧市街

 渓谷の葡萄畑に周囲をぐるりと囲まれた小高い丘の上にあるモンタルチーノの村の起源は、遥かエトルリア時代に遡る。中世時代からはシエナの支配下に置かれ、主に革製品の手工業で栄えた。ところが、16世紀半ばにトスカーナの二大強国フィレンツェとシエナの争いに巻き込まれ、シエナが敗北したことによりこの小さな村は徐々に衰退していった。取り残された住民達の暮らしを支えたのは、周囲の大自然にあったオリーヴや葡萄の木。自然から授かる恩恵を頼りに、オリーヴ・オイルやワインを造りながら生き抜いて来た小さな村は、それぞれの製品の品質を高めていくことで、今やイタリアワインの女王の生まれ故郷として、世界中に名の知れる存在となった。

 モンタルチーノの旧市街は、徒歩で30分もあればぐるりと一周できてしまうほど小さい。アップダウンのある狭い道を歩き回って目にするのは、右も左も「Enoteca(エノテカ)」の看板。店内にある床から天井まで届く棚には、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」のラベルが光るワインのボトルがびっしりと並んでいる。お土産用の手頃な3本セットから年代物の超高級品まで、あらゆるタイプのブルネッロに出会えるのは、まさに生まれ故郷ならではの醍醐味だろう。

 



煉瓦色の建物に挟まれた細い旧市街の通り。店舗のほとんどはワイン関係のお店だ(上)。エノテカではワイン、グラッパなどのテイスティングもできるので、飲み比べてお気に入りのラベルを探すのもまた楽しい(下)。


中心にあるポポロ広場。インフォメーションオフィスは塔のあるプリオリ宮殿の隣にある(上)。カフェを飲みに立ち寄ったバールもブルネッロ一色。気取らずにグラスで、最高のワインが味わえる(下)。