秋が深まってくると、なぜかアッシジへ行きたくなる。どうしてかは自分でもわからないが、紅葉を眺めながら静かな場所で思索に耽ってみたい、という欲求が湧き上がってくると、決まって行く先はアッシジになる。色とりどりの秋の自然美と旬の味覚を独り占めできる街は、イタリア各地にたくさんある。ちょっとメランコリックな晩秋を楽しむならトスカーナでもピエモンテでもどこでもいいのだろうが、私にとってアッシジは、それだけではない何か特別なエネルギーを与えてくれる無二の街なのだと感じている。

雨の多い11月、寒さも日々増してきている。家の中でぬくぬくと読書でも楽しむのに最適なこの時期に、あえて早起きをして外へ飛び出し、丘の上の中世の街を目指した。今回もまた、何かスペシャルなインスピレーションをいただけるに違いないという期待を胸に列車に乗り込んだ。

 

聖フランチェスコが愛した静寂と豊かな自然

 ウンブリア州の中央部、イタリアの地図の真ん中にあるアッシジの街は、中世イタリアにおける最も重要な聖人の一人であるサン・フランチェスコの出身地として知られている。清貧を貫き、人間や動物、自然を愛することを説いたキリスト教の聖人は、宗教という枠を超えて世界中の人々から尊敬され、親しまれている。世界遺産にも登録されているアッシジの街には、連日世界各国からの巡礼者や観光客が押し寄せてくる。過去に大地震で甚大な被害を受けたにもかかわらず、何度も立ち上がってきたこの街には、人々を惹きつけてやまない独特なパワーがあると私は思っている。

 スバジオ山の麓、標高約420mの丘の上に立つ旧市街からは周囲の平野と山々が見晴らせる。晩秋の天気は変わりやすく、街に着いた時はウンブリア名物の霧で下界は真っ白だった。雲と霧の間に差し込むかすかな太陽の光が、石造りの中世の街をドラマティックに照らし出している。一瞬、自分が今どこにいるのかわからなくなった。時間も空間もまるでどこかに消えてしまったかのような幻想的な世界に身を置いて、ああ、アッシジへ着いたのだと実感した。

 



サン・フランチェスコ大聖堂入り口前の広場からドラマティックなウンブリアの平野を見渡す(上)。丘の頂上にあるロッカ・マッジョーレまでハイキング。頂上からは美しい自然に調和した旧市街のパノラマが楽しめる(下)。