パスポート、取ったよ」。20代の姪のM子が嬉しそうに宣言した。イタリア人の相棒と私は、かれこれ9年近く前から「早くローマに遊びにおいでよ!」と誘い続けて来たのだが、なかなか行動を起こさない彼女に、「たぶん、イタリアに興味がないのだろう」という勝手な結論を下していた。パスポート取得を機にそれが突如一変し、彼女のイタリア初上陸がにわかに現実味を帯びてきた。
8月に入って、「チケット取った」という連絡が入った。なんと一人で来るという。イタリア語はおろか、英語もなんだか怪しそうな彼女にとって、初の海外旅行、初のイタリア、しかも初の一人旅である。何もかも初めてづくしのこの旅で、彼女はいったいなにを見つけたのか? 20代女子の初イタリア旅行の顛末記をご紹介しよう。

 

なにはなくともスーツケース!?

 可愛い姪の初めての海外旅行を全力でサポートすべく、「わからないことがあったら何でも聞いてね」と伝えておいた私の元に最初に届いた質問は、「キャリーケースって、やっぱりファスナーじゃない方がいいの?」だった。そうか。彼女はスーツケースも持っていないのだ。サイズや規定の重量など、ひとしきりメッセージが行き交った後、「ところで航空会社はどこ?」と私が尋ねると、「航空券、まだ買ってません」。

 へっ? この展開は予想していなかった。旅に出る時は常に、「どこでなにをするか。いつ行くか。チケットは取れるか」を最優先で考える私にとっては、航空券よりもスーツケースが優先するということ自体が驚きである。スーツケースの大きさや重量の規定は航空会社によって微妙に異なるので、まずはチケットを買ってから航空会社のサイトで調べるか、無難なサイズをデパートの店員さんに尋くように言って会話を終了した。

 その後、何度となく姪とのちぐはぐなやりとりが続いた。張り切りまくっている叔母は、「どこに行きたい? なにをしたい? 美術館観たい? 食べたいものはある?」と質問しまくったが、姪からの返事は、「芸術、わかんないけど。とりあえず有名どころは押さえときたいです。あと、ティラミス食べたい。」というシンプルなもの。今どきの女子の関心事がなかなか掴めないことに悩みつつ、とりあえず大混雑が予想されるヴァチカン博物館とウフィッツィ美術館、ローマのお気に入りのレストランだけは予約した。うーむ。果たして気に入ってもらえるだろうか。

 2個まで預け入れOKだったスーツケースは、ピンクの小型とオフホワイトの大型だった。どこへ行くにもついて来るらしいミッキー&ミニーの巨大マスコットがローマの空港で女子パワーを発散していた。