秋、本番。9月末から11月の期間はイタリアの田舎がとても賑やかになる。各地でその地域の特産物や地域内で収穫された食材を食べる『サグラ(Sagra)』と呼ばれる収穫祭が開催されるからだ。「サグラ」とはラテン語で「神聖なるもの」という意味があるそうで、古来より神の恵みである食べ物と人とをつなぐお祭りとして、毎年収穫の時期に神殿や教会の前で開かれていたものらしい。今日では宗教的な意味は薄れ、「地元の食材を旬の時期にみんなで食べよう!」というイメージが強くなっている。祭りの対象となる食材はさまざまで、秋の味覚の代表であるポルチーニ茸をはじめ、トリュフ、オリーブオイル、栗、イノシシやウサギといったジビエ肉など、その土地にちなんだ味覚が主役になる。10月の日曜日、私の大好物であるイノシシ料理のお祭りがローマ近郊の村で開かれると聞いて、早速駆けつけることにした。

 

山の斜面にある小さな中世の村

 ローマからフラミニア街道を30kmほど北上したところにあるサクロファーノは、ヴェイオ州立公園の中にある小さな村である。ムジノ山の斜面に浮かび上がるように突き出た旧市街には、中世時代の教会や塔、ルネサンス期の建築なども残っている。小さいながらも歴史を感じさせる石畳の小道を歩きながらお目当の「イノシシ祭り」の会場を探してみたが、迷路のような旧市街の中はひっそりと静まり返り、住民の話し声すら聞こえない。空っぽの広場を、一匹の野良が我が物顔でのっそりと横切っていく。もしや日時を間違えたか?と焦りながら城壁の外へ出てみると、見晴台の下の広場に人だかりができているのが見えた。近くのバールでカフェを飲みながら情報収集したところ、バールのおばちゃんが、「サグラなら下のメルカート広場でやってるわよ。12時から料理が配られるから、急いで行った方がいいわ」と教えてくれた。時刻は11時半、大好物のイノシシ料理が売り切れては大変だ。降り出した雨などおかまいなしに、イノシシ祭り会場を目指す。

 



ローマから車で30分ほどの自然公園内にあるサクロファーノ(上)。小さな旧市街には中世時代からの建物も残っている(下)。