山形赤湯の旅館「瀧波」は私のお気に入り宿だが、ここでの夕食には必ず「そば」が出る。チェックインした夕方4時30分から、旅館のオーナー自らそばの手打ちを実演し、それを、夕食のコースのなか「お凌ぎ」で登場する。山形の名産「出羽かおり」と「最上早生」のそば粉100%の香り高いそばで「お凌ぎ」ではもったいないほど、まだ、もう少し食べたいと思わせるそばである。毎日毎日そば打ちをしているうちに、はじめは全く素人だったオーナーが、1600回を超えた今では見事なそば職人となっている。

 

オーナーの見事なそば打ち

 そばの魅力に取りつかれたオーナーが、昨年秋、ついにそば屋を出すに迄に至ってしまった。それが米沢の「たきなみ」である。店は米沢の市役所近くにある。

 

 山形で「そば」といえば、「鶏そば」が有名。甘めに炊いた鶏肉が冷たいかけの中に盛られているが、どの店の「鶏そば」もつゆが甘い。甘ければ甘いほど人気があるらしい。ところが、「たきなみ」の「鶏そば」の出汁は甘くなく、しかし品があって切れの良い見事な出汁と言える。東京からやってきた私も東京の名店にひけをとらない出汁と感じるほどである。

 

「たきなみ」鶏そば