さて、そばでお腹いっぱいになりながら、出かけた先は「珈琲家」。今回が2度目である。初めて店を訪ねたとき、雨模様の午後だった。

 注文したコーヒーのモカが運ばれてきて、家内の美穂子が口に運んで一口飲むと、「これ、お砂糖が入ってる」と呟いた。そんなことはないだろうと、私も口をつけると、確かに甘い。この甘さコーヒー自体の甘さとは到底考えられなかったので、コーヒーを淹れてくれた店主に恐る恐る訊いてみた。

 

 「砂糖を入れずにひとくち飲んだら、甘みを感じたんですが、、、」

 

 奥のカウンターから中年のご主人が出てきて、丁寧な口調で答えてくださった。「そうですか、甘かったですか。以前もそのように感じられたお客様がおられて、じつは、その日も雨だったんですよね。なぜか、雨の日に限って、コーヒーが甘く出るようなことがあるようですが、理由はよくわからないんです」
 砂糖を入れずにその甘いコーヒーを愛おしく思いながら、ゆっくりゆっくり味わった。

 

「珈琲家」モカ

 だが、今日は快晴である。あの日の再現はないだろうと思いつつ、美味しいモカを味わいたいと店の扉を開けると、二度目の私を覚えていてくださった。前回と同じく、店内にひと気がない。これで商いが成り立つのかと心配になるほど、静謐で、コーヒーをゆっくり味わうには絶好である。

 

「珈琲家」