文・写真/室橋裕和

 

■日本でいちばん「タイ濃度」が高い県

 茨城県南部には濃密なタイ世界が広がっている。高度経済成長期からバブル期にかけて日本にやってきて、そのまま定着したタイ人がたくさん暮らしているのだ。その理由については本連載#118で触れたが、そんなタイ人の集住する街のひとつが筑西だ。

 ここにはタイ寺院もあれば、年季の入った建物に3軒のタイレストランが入居する「タイ長屋」のような場所もあって、そこで僕はナムトックムー(豚焼肉とハーブのサラダ)とカオニャオ(もち米)を食べていた。タイ東北部イサーンの庶民的な料理である。茨城のタイ人はイサーン出身者が多いのだ。

 となりのテーブルもやっぱりイサーンから日本に渡ってきて20年超というベテランのおばちゃんたちで、タイ語で話しかけてみると話題はすぐ近くに迫ったタイ正月、ソンクランのこととなった。僕はタイに住んでいたことがあり、いくらかタイ語がわかるのだ。

「そこのお寺でもやるんだけど、来週の日曜日にはカサマのほうにも行くよ」

「私たちで屋台を出してタイ料理つくるから、おいで」

 口々に誘われる。笠間市にもタイ寺院があるのだ。ソンクランの本来の日程は4月13~15日だが、今年は平日なので日本にあるタイ寺院では前後の土日にイベントを開催するところが多い。そして茨城にあるふたつの寺院は日程を別にして行うのだという。そのほうがたくさんの人が来られるし、両方楽しむこともできるからだ。

 というわけで、僕は笠間のほうに行ってみることにした。

とっても辛いけどおいしい、筑西「バーン・イサーン」のナムトックムーとスップノーマイ(筍の和え物)