ステファン・ダントン

 

 

 川根本町の行政マンとして、茶農家の息子として、日本茶を愛する仲間として私にさまざまな学びを与え続けてくれる川根の「トニー」。私の疑問・質問にいつでも率直かつ的確なアドバイスをくれる彼が私の仕事についてどう思っているのか、改めてたずねてみた。直接いいづらいこともあるだろうから、四万十の「あにき」のときと同様、第三者に聞いてもらった。

 

ステファンとの出会いと当時の印象は?

 

 ステファンを最初に見かけたのは役所の廊下だったかな。サラゴサ万博の関係で農業室に出入りしている外国人がいるな、と思って眺めていた。自分の仕事とは直接関係なかったからね。でも、どうやらコミュニケーションが取りづらいのか、みんなに持て余されているように見えて、つい声をかけたんだ。それが始まりだったかな。きちんと紹介されたのは当時の町長との食事会の席だったかもしれない。どっちにしてもそれからメールでのやりとりをするようになった。

 メールをやり取りし始めたころ、親切のつもりで全部ひらがなのメールを送ったら、「漢字にしてくれないと意味がわからないよ」と返信がきて、「こいつ外国人なのになんで漢字の読み書きができるの? 変な奴だな」と思ったのが今では懐かしい。

 最初は、「日本茶、それも日本の三大銘茶のひとつでもある川根茶にフレーバーをつけるなんてとんでもないことをいっているな」と正直アレルギーに近い感情を持っていた。「奇をてらった外国人の思いつきで川根茶を台無しにされるんじゃないか」という他の生産者と同じ危惧を抱いたんだ。僕は茶農家の息子でもあるし、川根茶に誇りを持っているからね。

 ところが、ステファンと話していると、川根茶や川根の茶農家への尊敬の気持ちや茶産地に対する憧れが“ああいう口調”の中に垣間見える。だから彼と彼の仕事に興味を持つようになった。そのうち、この人は本気で川根茶を愛していて、川根茶を世界に広げるひとつの切り口としてフレーバーを利用しようとしているんだ、というその真意がわかったから、フレーバーをつけることも理解できた。
 

 

2009年おちゃらかを訪れたトニーと
吉祥寺『おちゃらか』を訪れたトニーと(2009年)