文/ステファン・ダントン

 

 四万十を中心とした幡多地域の特産品に地域の文化や歴史、生産者の顔や想いをのせて適切に伝えることで、地域全体を活性化に導いている細木さんを私は『あにき』とあおいでいる。私のいっていることをおそらく全部理解してくれていると思うし、彼のいうことはどんなに耳に痛いことでも受け容れられる。だから、今回あらためて『あにき』に「私、ステファンのこと、仕事のしかた、どう思う? あにき、アドバイスをくれない?」と第三者に聞いてもらった。

あにきが上京したときは必ず一杯。2018年10月、酒の席にて

 

ステファンの第一印象

 ステファンとはじめて会ったのは2011年。2009年、幡多地域の大月町というまちの商品開発と販売を委託されて、まちの歴史・文化環境や食材を調査して5、6種類の商品を共同開発したんだ。デパート販売、展示会出展をするようになって3年目、宣伝のために「雑誌でPRしよう」となって、かねてから懇意にしていた雑誌『自遊人』の社長に相談した。予算はとても少なかった。「広告を掲載することはできるよ。でもその予算だと1ページしか割けないな。それじゃあつまらないから、イベントをしよう。幡多地域の食材を使ってフレンチのシェフに料理に仕立ててもらおう。各界からゲストを30名くらい呼んでパーティーをしてその様子を記事にしよう」と提案してくれたんだ。

 そのパーティーの現場にゲストとして現れたのがステファンだった。会場に遅れて入ってきたにもかかわらず、恐縮した様子をみじんも見せず、むしろ場の空気をかき混ぜる勢いで嵐のように登場した。大きな声でみんなに話しかけながら、取り出したペットボトルから「飲んでみて」と自分の店の水出し茶をグラスに注いでいる。「うわ。なんだこいつ! 変な奴だな」というのがステファンの第一印象だ。

 その席上、大月町のきしまめ茶について説明していたら、その変な奴が食いついてきた。ものすごい勢いで「どんな場所に生えているの? 周辺の環境は?  他の農作物は? どんな場面でどんな人が飲んでいるの?」矢継ぎ早に質問をぶつけてくる。その答えを聞き終わる前に「〜をブレンドしたらいいかもしれない」と自分のアイディアをかぶせてくる。最初は面食らったけどその熱量に「素朴なきしまめ茶をどのように展開したら都会でも飲まれる商品にできるか」その答えをステファンが持っていることを確信したから「おまえと組もう」と思ったんだ。変な奴が双子の兄弟

 それから話は盛り上がったんだけど、実際に事業がスタートしたのはそれから1年後。予算や他の環境が準備できて、吉祥寺の『おちゃらか』に行ったんだった。1年間電話で話したりはしていたけど、1年ぶりの再会をしたときには、もうすっかり打ち解けていた。たまたま同じピンク色のシャツを着ていて「おそろいじゃん」と笑いあったのを覚えている。

 それから、「四万十河原茶」開発のためにステファンは何度も四万十へ来て、そのたびに一緒に農家を訪ねたり酒を飲んだり遊んだりするうちに、いつしかステファンは僕を『あにき』と呼ぶようになったんだ。最初のうちは「俺のほうが年下なのになんで『あにき』なんだよ?」といっていたが、ステファンは一向に呼び方を変えないから、そのうちどっちでもよくなってきた。今では、本当に兄弟のように気のおけない存在になっている。

 実際、ステファンと自分がよく似ているな、と感じることがままある。仕事に対する態度、考え方、進め方。トラブルが起きたときの対処の仕方。とてもよく似ているから、意見の衝突はほとんどない。「だよね?」「だろ?」と同意を確認しながら同じペースで作業が進められる。自分のペースでどんどん話し、どんどん進んでいくから、ときによっては「ついていけない」と思われるかもしれないこの感じもよく似ている。

 最近こんな風にステファンといい合った。

「双子はあとに生まれたほうが兄だったよな。なんか俺たち前世双子だったんじゃないかってくらい気が合うな。それがたまたま今回フランスと四万十に生まれて、奇跡的に再会したんじゃない?」
50を過ぎたおじさんどうしがまるで乙女みたいなことを、と笑われるかもしれないが。